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株式会社FULLCOMMISSION 代表取締役・山崎明信さん|インバウンド需要のある北海道で先駆けてゲストハウスを展開し、経営の危機を乗り越える

札幌圏
建設・プラント・不動産
株式会社FULLCOMMISSION 代表取締役・山崎明信さん

宿泊施設やシェアオフィスなど、国内外で不動産の企画開発を進める株式会社FULLCOMMISSION(札幌市)。北海道のインバウンド増加とコロナ禍を経て、事業が安定するまでの紆余曲折を代表取締役の山崎明信さんにお聞きしました。

インターンの受け入れ先を増やすため起業を決意

多国籍なフルコミッションのメンバーの画像
年齢も国籍もさまざまな、フルコミッションのメンバー

山崎さんは北海道の大学を卒業後、東京の企業に就職されたのですね。就職活動で感じたことがあったそうですね。

大学最後の1年を休学して余裕があったので、両親がいた埼玉を拠点に東京で就職活動をしました。東京の学生が1~2年生のうちからインターンできるにも関わらず、北海道にはインターン先がほとんどありません。3年生の12月から採用が始まる4年生の4月までに集めた就職情報だけで、2年以上かけて蓄えた知識と経験がある東京の学生と戦わなくてはなりません。北海道の友人たちが希望の企業に入れないのを目の当たりにして、この現状を変えたいと思いました。

就職活動が起業の大きなきっかけになったのですね。

北海道に起業家が増えればインターン先が増えて、北海道の学生が挑戦できる機会も増えます。そのために、自分も起業しようと決心しました。ただ、その前にサラリーマンとして経験を積みたいと思い、上場企業の不動産会社に入社しました。

もともと不動産業に興味があったのですか?

起業する人が多い会社だったので、いろいろな経験が積めると思って選びました。仕事量が多く残業も当たり前でしたが、いい経験でした。大きな企業なので意思決定が遅く、仕事が思いどおりに進まないジレンマも味わいましたし。当初の計画していた通り3年間だけ勤めて、2010年に退職しました。

ブームに乗ったシェアハウス&ゲストハウス事業が大成功

シェアハウス「Ten to Ten apartment」の画像
オフィスビルをリノベーションしたシェアハウス「Ten to Ten apartment」

2011年に東京で立ち上げた株式会社FULLCOMMISSIONは当時、webマーケティング会社だったそうですね。事業は順調でしたか?

全然うまくいかず、厳しかったです。前職では成績が良かったので自信があったのですが、会社のネームバリューのおかげだったと気づかされました。それでも1年くらいで波に乗れたのですが、Google検索のアルゴリズムがアップデートされた影響で、また売上が落ちてしまいました。

事業の不調を乗り越えるために、どんな手を打ちましたか?

事業がうまく行っていなかった時期に、生活費を抑えるためにシェアハウスを作って、自分もそこに住みました。不動産会社との人脈も広がっていましたので、以前、立ち上げの経験があったシェアハウス事業へ転換することを決めました。そのタイミングで北海道に移住しました。

北海道でのシェアハウス事業は順調でしたか?

テレビ放映された「テラスハウス」のブームに乗ることができ、5棟まで増やすことができました。ブームは長く続きませんでしたが、2015年に観光ビザが緩和されてインバウンドが増加し、数日だけ滞在したい人向けのゲストハウスが大当たりしました。

過当競争を避け、北海道から海外へ事業を拡大

ゲストハウス「Ten to Ten Mexico」の画像
60人ほどが宿泊できるメキシコのゲストハウス「Ten to Ten Mexico」

ひとつの事業が衰退するタイミングで、新しい事業を始められたのですね。

とてもいいタイミングでしたが、競合企業もゲストハウスを立ち上げるようになり、このままでは北海道では過当競争になると危惧しました。それなら、海外でゲストハウスをやろうと、会社の従業員やゲストハウスで出会った人と協力して、彼らの出身地のメキシコ、タンザニア、ベトナムでゲストハウスをオープンしました。

海外での事業はいかがですか?

刺激があり、学べることも多くとても充実しています。コロナの影響でタンザニアとベトナムからは撤退しましたが、比較的影響が少なかったメキシコでは、今でも安定した利益を上げています。ゲストへの気配りや施設の清潔さなど、日本人らしさを生かした運営が好評です。予約サイトに高評価のレビューが次々に投稿され、さらに予約が増える好循環が生まれています。

日本のゲストハウスも苦しい時期があったと思います。会社として、コロナ禍をどのように乗り越えましたか?

シェアハウスやゲストハウスの事業を続けながら、新しくシェアオフィスをスタートしました。さらに、中古不動産のリノベーション事業も始めています。実は、ゲストハウス事業と並行してマーケットを開拓していて、不動産会社時代のスキルも生かしながら、売り上げを伸ばしています。

起業家を目指す北海道の学生にとっての学びの場に

インターン学生とのイベントの様子
シェアオフィス「BYYARD」でインターンの学生とイベントを企画

これまでのお話から、大変な時期がたくさんあったのが分かりました。どうして乗り越えられたと思いますか?

常に新しいビジネスの種を探して、行動し続けたからだと思います。「常に前を向いて新しいことをやろう」という社風も自分を後押ししてくれました。

インターンの学生も多く受け入れていますが、彼らとの関わりで心掛けているいることはありますか?

小さい会社なので、0から100まですべては教えてあげられない代わりに、自律的に学習するための知恵を分けています。例えば、起業を考えている人には、「世の中をどう変えていきたいのか」「どこで利益を生み出していくか」という、2つの視点を持つことが大切だとか。そういうことを伝えています。

今後の目標を教えてください。

ジムやサウナなど、ライフスタイルに関する事業をやってみたいですね。そして売上を10倍にして大きな力を付けた上で、「起業カルチャー」を作ったり、海外展開をしたりと、さらに大きな挑戦をしていきたいです。

(取材・撮影:北山大樹、文:桑田奈々子、編集:片野睦)

インタビューに応えてくれた人

山崎明信さん
株式会社FULLCOMMISSION 代表取締役 山崎明信さん

1984年新潟県生まれ。北海道大学農学部卒業後、東京の上場企業の不動産会社に入社。2011年1月に東京でWebマーケティング会社として株式会社FULLCOMMISSIONを起業。不動産事業に転換して札幌に拠点を移し、シェアハウスやゲストハウス、シェアオフィスの運営、リノベーション事業を展開。インターンの学生を積極的に受け入れ、若い人が挑戦できる環境づくりにも取り組む。