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株式会社かたわら 代表取締役社長・佐藤彰悟さん|人事という参謀ポジションで、地方の自治体や企業の目的達成を助ける

札幌圏
コンサルティング・リサーチ業界・専門事務所・監査法人・税理士法人
株式会社かたわら 代表取締役社長・佐藤彰悟さん

人事顧問を中心に、制度設計や採用ブランディング、教育研修・講演といった組織づくりをサポートする株式会社かたわら。代表取締役社長・佐藤彰悟さんは、これまで広告・宣伝からマーケティング、広報、営業企画、人事まで経験し、地域活性をライフワークにしているゼネラリストです。北海道を中心に全国の自治体、企業と手を取り、「毎年新しいことを1つ以上始める」とパワフルに活動する佐藤さんの仕事への原動力をお聞きしました。

毎年新しいことに挑戦し、ローカル地域を人事の力で元気に

さまざまなプロジェクトの様子
取引先は全国の地方自治体や企業。直接、担当者と会うことを大切にしています

人事や組織づくりなどさまざまな事業を展開していますが、事業の核を教えてください。

人事を事業の核に、「人事のプロ」「マーケティング経験者」「北海道出身のローカルの事情通」の強みを生かした事業を展開しています。叶えたい夢を持っている人の隣でヒトやコトを提供したり、耳打ちしたりする「かたわら」のポジションで活動しています。

勤め先の業務とは別に始めていた「複業」を、2022年12月に法人化した事業だそうですね。

僕自身、経営者になるとは1ミリも考えず、複業の一つとして考えていた事業だったんですけどね。僕は地域を活性化したい想いが強く、関東圏への反骨心も持っている人間でしたから、北海道に限らずローカルを元気にしたいとずっと考えていました。その手段としてマーケターや人事、組織作りの経験を生かしてみようと、サラリーマンしながらお手伝いしていたら、ありがたいことに起業できるまで認めてもらえたという感じですね。

会社を立ち上げるまで成長できた、他社にはない強みと感じているのはどんなところですか? 

僕が北海道出身だからこそ汲み取れる、ローカル特有の事情を理解できることでしょうか。地方は何をやるより「誰とやるかが大事」だったり、飲みにケーションが重要だったりと、人付き合いの中で事業が生まれるカルチャーが残っています。それを知らずに生産性だけを優先してお付き合いすると、身内に入れてもらえず、何かあっても助けてもらえなくなることもあるあるです。僕らにはそれを分かって接せられるのが珍しいのだと思います。

YoutubeChannelやラジオを始めるなど、常に新しいことに挑戦していることも、他社では真似できないことですよね。 

僕の人生の恩師である、最初に勤めた会社の専務が「毎年、昨年の自分を超えろ。どんなに小さくてもいいから、新しいことをやれ」と言っていたことを20年以上守っているだけですよ。でも、毎年1つずつ新しいことに挑戦して、ちゃんとそれを着地させようと努力しているので、お客様はちゃんと成果として評価してくれているのかもしれませんね。

北海道の学生を助けるために始めた、就活サポートが人生の転機に

2019年開催した就活支援イベントの様子
社会人のゲストを迎えることもある就活支援イベント

元々、複業OKの札幌のブライダル会社で人事として働いている時に、大学生の就活支援サークルを立ち上げたのが、起業のきっかけと伺っています。どうしてこの就活支援をはじめたのですか?

人事として会社に勤めながらずっと、関東圏と地方の就活の情報格差に課題があり、環境的にも関東圏の方が恵まれていると感じていました。関東圏の大学生は1、2年生の時に長期のインターンシップで社会人と同等の働く経験ができるなど、早い段階で企業と接する機会があります。一方、地方は3年生になって、大学や周囲の大人から急かされて就活し始める人が多く、なかなかうまくいきません。そんな状況を見て私は、「大人と会話するという“場慣れ”できる環境がないからだ」と、現役の人事が就活支援するのは面白いんじゃないかと思ったんです。

就活サークルはどんな活動をしていたんですか?

最初は学生を50人ほど集めて人事目線でアドバイスしたり、ネットの就活情報の嘘なども話していました。この活動が日本経済新聞の北海道版に掲載されると、知人の紹介で厚真町さんと繋がり、大学生連携のプロジェクトを立ち上げることになりました。学生と一緒に何かしたいと考えていた時に、丁度僕のサークル活動に興味を持っていただいたみたいで。

厚真町とはどんなプロジェクトを進めましたか? 

普通の学生生活ではなかなか経験できないことを大学生に提供したいと考え、フィールドワークを企画しました。サークルのメンバーが3カ月間厚真町に通って、テーマに沿って町民にインタビューし、最後に町長にプレゼンしました。学生の提案で厚真町の公式Instagramが立ち上がったこともあり、今度は地方紙に掲載されて、ほかの地方自治体からも声をかけてもらうようになりました。

厚真町とのプロジェクトの後、ほかの自治体とも大学生と町の交流を続けたのですね。 

自治体の方とお話する中で、学生プロジェクトのほかに職員研修の依頼があったり、東京のスタートアップ企業から人事顧問の相談があったりと、ありがたいことに紹介でどんどん事業が成長していきました。

人事のスキルを磨いてくれた学生とのキャリア相談

2019年頃に開催した、起業を目指す学生主催のイベントでモデレーターを務めた時の様子
2019年頃、起業を目指す学生主催のイベントでモデレーターを務めたことも

佐藤さんは札幌でいち早く複業を始めて注目されたそうですね。

僕が始めた8年くらい前は、働き方改革で「複業」という言葉がTwitter(現・X)にも出てきたぐらいのタイミングです。当時、札幌には複業している人がほとんどいなく、今よりお金を稼ぐためのイメージが強かったので、現役の人事が学生からお金を取らずに就活支援するなんて珍しかったんでしょうね。後ろ指を刺された時期もありました。

大学生の就活支援サークルを無償で運営していたとは驚きです。

僕にとって複業は、本業では得られないものを得られる課外活動。いろんな人と面談することが人事のスキルアップになって、「ゆくゆくは僕の市場価値を上げることに繋がるかも」と、お金のことは考えていませんでした。

人事のスキルを磨く準備期間にも感じられますね。なぜ複業で市場価値を上げようと考えたのですか? 

北海道を含めた地方で、月給50万円になるためのストーリーを描いてみたんです。中小企業に勤め続ける場合、毎年月給1万円アップが関の山。50代で達成できるとしても、厳しい査定をクリアして取締役クラスになるまで頑張る必要があります。それなら、毎月5万円の報酬をくださる社長さんを10人見つける方が現実的だと考えました。そのためにまず「北海道で人事といったら、佐藤彰悟って面白い人いるよね」と言われるぐらいになろうと決心したんです。

大学生の面談やキャリア相談に応じることで、就活生の情報格差を解消しながら、ご自身も人事のスキルを磨けますね。 

一企業の人事では、その企業に興味のある求職者しか会えませんが、就活支援のサークルには地元に残りたい人も、東京へ行きたい人もいる。大企業に勤めたい人もいれば、YouTuber、ブロガー、公務員になりたい人がいる。いろんな人の人生を預かって、望むところに着地させてあげられたら、僕にとってもすごく有益。むしろ、経験させてもらっている僕がお金を払わなきゃダメなくらいですよ。

自分らしい働き方のために決めた2つの譲れない条件

家族で一緒にさとらんどに出かけた時の様子
起業したことで、佐藤さんはより家族との時間を大切にしています

これまでのお話を聞く限り、スムーズに事業を拡大されているように感じますが、大変な時期はありましたか?

何が一番自分の働き方として合っているのか悩んだ時が苦しかったですね。個人事業主になったタイミングで、2、3年間は模索していました。

3年間考えて、どんな自分らしい働き方が見つかりましたか? 

譲りたくないことが2つ決まりました。1つは息子を大事にすること。丁度、息子を保育園に送り迎えしている時期で、ちゃんと子育てしたいと考えていました。もう1つは、時間を売らないことです。

時間を売らないとは、時間契約のお仕事は受けないということですね。 

僕の仕事は企業の目的を達成することですから、実際に内部の人間としてフレキシブルに動きたいんです。お客様には「御社のスタッフだと思って接してください」と伝えているので、相談ごとはSlackで連絡してもらえれば、すぐ返信しています。その企業の名刺を持って、説明会やイベント、面接にも参加していますよ。

時間契約を強く希望される企業もあったんじゃありませんか?

時間契約じゃないと、ちゃんと仕事してくれるのかな…と心配になるのも分かりますから、お付き合いが叶わなかった会社がいくつもあります。僕自身も「この契約を取ったら年収上がるけど、働き方が違う」と葛藤していましたし…。でも、この2つのことを譲らなかったからこそ、今の働き方があると感じています。

自分らしい働き方を求めるのも起業する理由ではありますよね。

国もスタートアップ支援していて、起業=キラキラしているイメージありますけど、立ち上げることより、事業を続けることが難しいんですよね。僕は複業でスタートだったので、売上0円でも家族を路頭に迷わせずに済みましたけど…。だからこそ、起業したい人には複業からはじめ、法人成りする流れをおすすめしています。0から起業してしまうと、食っていくためにどんな仕事でも受けなきゃいけなくなります。そうすると自分のライフスタイルを通せない場面が出てきて、本来の目的から離れてしまうんじゃないかと思います。

企業のトップを支える2番手のポジションに活躍の場を

媒体の取材を受けた時の画像
都会と地方の格差をなくし、地方の活性につながる組織づくりに励む佐藤さん

今後はどのような事業に力を入れていきたいですか? 

僕みたいな企業の参謀のような2番手の人材が、活躍できる土壌を作りたいですね。僕が培ってきたスキルや、立ち回り方を伝えられるスクールみたいなものを開催したいと思っています。今はまだ、企業の2番手という立ち位置で起業しても、ほとんどの人が食べていけない状況です。

なぜ2番手の人材が活躍できるようにしたいのですか? 

多くの組織の問題点はほとんど、2番手となる人材がいないことです。ワンマン社長がデザイナーやエンジニアに外注しても、社内にディレクターがいないから、前回通った案が次になるとダメになるとかが起こります。相手の意図を読めない翻訳ミスや、伝達ミス、調整ミスなどローカル企業の揉めごとの起因は、社長とのクッションになる2番手がいないことが多いと感じています。

確かに社長ひとりではチームをまとめるのは難しいこともありますね。 

僕は2番手の存在が、企業の鍵なんじゃないかなって思っています。「繋ぐ」「支える」「翻訳する」ことを生業にする人が各地にいれば、もっと成長する企業が増えると思うんですよね。事業承継に困っている会社も、2番手の人がいれば会社を続けられるかもしれない。

2番手の人材に注目するのは面白い発想ですね。

東京で働いているけど、地元に帰りたい人にもいい案じゃないかと思っていて。僕の友人に北海道に戻ってきたいけど、「年収が下がるし、仕事もない」と諦めている人が結構多いんです。そういう彼らに、2番手のポジションで起業するのもいいよと言えるようなロールモデルになりたいですね。

(取材・撮影:北山大樹、文・編集:片野睦)

インタビューに応えてくれた人

佐藤彰悟さん
株式会社かたわら 代表取締役社長 佐藤彰悟さん
趣味:
邦ロック鑑賞、音楽フェス参加、ドライブ、グルメ巡り

1977年生まれ、札幌市出身。札幌学院大学人間科学科卒。2013年に札幌市のブライダル会社・グローヴエンターテイメントに入社し、人事として従事しながら、複業として就活支援サークルを立ち上げ、2022年に「株式会社かたわら」として法人化。現在は、全国各地の企業、自治体で人事顧問や人材育成アドバイザーなどを務めている。2024年1月に初著書「No.2じゃダメですか?」(逆旅出版)を出版。