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株式会社レゾナンスフーズ 代表取締役・宮村美明さん|スイーツ専門店は飲食の最終形態。独自のこだわりで東京進出目指す

札幌圏
外食産業・飲食

札幌市内中心部で再開発が進み、注目を集める創成川イースト地区。数ある路面店の中でもユニークなオリジナルスイーツで人気の店が、自家製ソフトクリームと壷焼き芋の店「ミルクスイート」です。飲食業界がコロナ禍で苦闘していた2020年に、あえて新業態の店づくりに挑戦した株式会社レゾナンスフーズ代表取締役・宮村 美明さんに話を聞きました。

良質な食材を使い、食感や見た目にもこだわったメニュー開発

食材選びにもこだわり、味も食感も良いメニューを提供

お店はテレビの情報番組にもよく登場されていますね。

おかげさまでテレビ番組では7局に取り上げられ、年に数回は取材を受けています。私は23、4歳の時から20年以上ずっと飲食の仕事を経験してきて、「飲食店はおいしくて当たり前」だと考えるようになりました。味がいいだけではなく、食感や見た目の楽しさ、手頃な値段、接客、お店の雰囲気も大切ですよね。特に食感にはかなりこだわっていて、じっくり試作と試食を重ねてメニュー開発をしています。

特に食感が楽しいメニューは、どんなものがありますか?

自家製スイートポテトのペーストやミルク、抹茶などをふわふわの泡にしたエスプーマを、冷たいソフトクリームにトッピングしたシリーズは、口当たりと温度の違いを両方楽しめます。看板メニューになっている、表面はカリカリ、中はふわトロの「壷焼き芋ブリュレ」も自信作です。洋菓子のモンブランのように細く搾ったペーストを盛った「えっ何これスイートポテト」「えっ何これチーズケーキ」は、ネーミングの面白さも注目されました。

ミルクスイートのメニュー画像
ソフトクリームはイタリア・カルピジャーニ社のパストマスターで製造

味わいの面でも、こだわりがいろいろありそうですね。

ソフトクリームに使用する牛乳の産地は、ハーゲンダッツにも高く評価された道東の浜中町。うちの店では契約牧場の成分無調整牛乳を使っています。製造に使う機器は「ソフトクリーム界のフェラーリ」と呼ばれるイタリアのトップブランド、カルピジャーニ社を選びました。焼き芋は程よい甘みでしっとりした口当たりの新品種シルクスイートを、陶器のつぼの遠赤外線で1時間かけて焼き上げます。

焼肉、モツ鍋、丼、そしてスイーツへ。閉店を繰り返して進化

ミルクスイートの外観画像
サッポロファクトリーに近い好立地の店舗

今のお店を始める前も、スイーツ専門店をやっていらしたんですか?

最初は営業の仕事で開業資金を貯めて、焼肉店からスタートしました。肉の切り方などを集中的に修業すれば、調理全般を学ぶ業態より参入しやすいかと考えまして。次は今までにないエビだしのモツ鍋の店に挑戦し、2号店も出しました。うなぎに薬味を足したり、だし茶漬けにしたりする「ひつまぶし」をヒントにして、丼ものをアレンジしながら味わう「丼まぶし」の店もやっていました。

他のお店は今も営業されているんですか?

今はこの「ミルクスイート」だけです。他の店は建物が老朽化して退店しなければならなくなったり、店長が退職して店を回せなくなったりして閉めました。飲食業界はもともと「人に雇われて働くより、自分で何かしたい」という人が多いんですよ。雇われ店長として経験を積んだら、独立してしまう人ばかりだと大変です。新たに人を育ててもうまく行くとは限りませんし、また辞めるかもしれませんし。

人手不足の時代に、経験豊富な人材がいなくなるのはきついですね。

現場の業務が属人的というか、特定の人しか担当できない仕事が多い店は、その人が辞めたら店を開けられません。製造工程をレシピに落とし込み、スタッフがベテランの手助けなしで安定した味を提供できるスタイルの店にしようと考えて、「ミルクスタイル」が誕生しました。仕込みに必要な時間は短いですし、食器洗いがないので閉店後の後片付けも短時間で済みます。拘束時間が短く、働きやすい店ですよ。

「3年持ちこたえられたら本物」。経験が生んだ成功の法則

ミルクスイートの焼き芋を焼いている様子
壺の中で炭火でゆっくり焼き上げることで、しっとりなめらかな舌触りの焼き芋に

コロナ禍のさなかに新業態の店舗を開店した経緯を教えてもらえますか?

たまたま新しい店を始めようとして不動産会社に相談した時、立地のいいタピオカ専門店が店を閉めるかどうか考えているところだったんです。当時はモツ鍋店の売り上げで資金面に余裕があったので、スイーツ専門店は最初は赤字でも、5年ぐらいかけて育てていこうと考えました。北海道では冷たいスイーツがメインだと、夏は忙しく冬は暇になりますが、冬にじっくりメニュー開発をして夏にしっかり稼ぐのもいいかなと。

店を育てるのに5年。なかなかの長期計画ですね。

私は飲食店が実力を発揮できるのは、開店から3年経ってからだと思うんですね。オープン当初は目新しさや物珍しさで興味を持ってもらえるので、最初の1、2カ月はお客さんが入るんです。そこからが厳しい。営業を継続しないと認知度が上がらないし、お客様からの信頼もまだない。だから新しい飲食店の売り上げが伸びて、経営を軌道に乗せられるかどうかが決まるのは、自分の中では開店の3年後なんです。

3年間持ちこたえられない店も多いかと思います。

店としての体力がないと、継続できなくて諦める人が出てくる年数ですね。でも、3年続けられたら「成功する法則」が見えてきます。どんなメニューを出せばお客様に喜ばれるか、がっちり固まってくるはず。私も最初の1年は手探りでめちゃくちゃいろいろな品を出していました。メニューが多過ぎて人気が分散するとどれも売れませんから、主役を張れる目玉メニューを考案した方がベターだと考えています。

飲食の道で生きていく。夢は東京進出とフランチャイズ事業

ミルクスイートのメニュー画像
干し芋を揚げた限定メニューなど、アイデアが光るメニューを開発しています

宮村さんにとって、飲食業の魅力とは何でしょう。

営業もそうですが、飲食業は自分で頑張れば頑張っただけ結果が出る成果型の世界です。学歴もいりませんし、やる気があれば誰でも挑戦できます。何よりうれしいのは、お客様に「おいしかった」「ごちそうさま」「ありがとう」と言ってもらえるのが励みになること。私が20代前半で独立できたのも、飲食業を選んだからでしょう。守りに入る年齢になる前の、行動を起こしやすい若さだったからかもしれませんが。

今後の目標や、夢を聞かせてください。

目標の一つは東京都内に進出することです。直営店を構えて自分の力と、北海道のソフトクリームの商品力を試したい。ただ東京にはつてがないので、内装工事の業者さんも仕入れ先も、ゼロから探さなければなりません。出店するのにベストなタイミングも最適な場所も、まだまだこれから模索するところです。東京で一緒にやろうと言ってくれる企業さんを見つけて、つながりを作れたらいいですね。

北海道で実現したい夢もありますか?

いつかは「ミルクスイート」をフランチャイズ事業として展開したいです。飲食店は利益率が高い業界ではありません。フランチャイズ店のオーナーは売り上げを維持して、ロイヤリティーも納めなければなりませんから、どこもかなり厳しいのでは。市場として経済的に厳しい北海道で、きちんと収益を上げられるビジネスとして成立させるために、まず今の店舗を成功事例としてアピールできるように頑張ります。

(取材・撮影:北山大樹、文:三本木香、編集:片野睦)

インタビューに応えてくれた人

宮村美明さん
株式会社レゾナンスフーズ 代表取締役 宮村美明さん

1980年生まれ、札幌市出身。23歳から飲食業界で働き、2005年に独立。ホルモンやモツ鍋、丼ものなどの店舗を経営し、2020年に「ミルクスイート」をオープン。2022年に法人化。繁盛店を研究しながら、世界に通じる味を追い求めている。