株式会社フジソー 代表取締役・樋口直樹さん|施工管理は人間力。コミュニケーションが支える現場のチームワーク

札幌市を拠点に電気工事業を展開する株式会社フジソー。マンションや病院、老健施設などの建物内で行われる「ハコモノ電気工事」を専門に手がけ、施工管理業務を中心に据えて事業を展開しています。今回のインタビューでは、2代目として会社を引き継いだ代表取締役・樋口直樹さんに、事業の特徴や人材採用の方針、経営者としての想い、そして業界の展望についてお話を伺いました。
街の“箱物”を支える電気工事。現場の司令塔=施工管理の役割とは
.png)
御社の事業内容について教えてください。 ホームページでは「新築電気工事」とありますが、どういった事業を展開されているのでしょうか?
電気工事といっても、ジャンルはさまざまです。たとえば土木分野に強い会社はトンネルや信号設備、港湾関連の設備を手掛ける会社もあります。当社は主に街中にある老人保健施設やマンション、病院など、建物の中の電気工事全般を専門にしています。
施工そのものは外注の職人さんにお願いしていますが、現場での段取りや調整、図面作成、工程管理などを当社の社員が担っています。現場の管理者という立場ですね。
御社の強みや、企業の特色はありますか?
差がつきにくい分野ではあるのですが、「設計のとおりに」という使命のもとで、特に「施工の精度を保つ」という点は大きな強みだと思います。もちろん自分たちで考える部分もたくさんありますが。あとは、いま採用や求人に力を入れているという点も、当社の特色の一つと言えるかもしれません。
理系じゃなくても活躍できる。人間力を活かせる施工管理の仕事
-1024x623.png)
採用に力を入れているとのことですが、具体的には取り組みをされていますか?
やはりこの業界では人材の確保が課題です。当社ではいま、求人の出し方、会社の見せ方に注力しており、ホームページでもそのあたりを意識してリクルートページを構成しています。
また「Uターン採用」にも積極的に取り組んでいます。電気工事の仕事は全国どこでも共通しているので、東京や大阪で働いていた人が「地元に帰りたい」と思ったときに、当社のような会社がその受け皿になれればと考えています。実際に、埼玉からUターンしてきた方が入社していて、面接の際には私自身が現地まで出向きました。引っ越し費用も会社で一部負担するなど、サポート体制も整えています。
採用するにあたって、どんな方を求めていますか?
資格と経験があるに越したことはありませんが、未経験でも大丈夫です。一番大事なのはコミュニケーション能力です。施工管理の仕事は、職人さんや他業種の方とさまざまな場面で交渉をして、スケジュールを調整する仕事です。「電気工事=理系の採用」が基本になるのですが、僕はそこまで理系要素が必要だとは思っていなくて、むしろ文系的な営業コミュニケーションが得意な人の方が向いているかもしれません。
現場のディレクターのようなポジションなんですね。
まさにそうです。現場には所長という責任者がいて、その下に「小さなディレクター」がたくさんいるイメージですね。工程管理から重機の使用タイミングまで全部考える。段取りが悪ければその分コストがかかるので、非常に重要なポジションです。
次世代にバトンを渡すために。2代目が見据える“変化の先”
.png)
2代目として会社を継いでから、大事にしていることはありますか?
父の時代はバブル前後で、トップダウンで一気に売上を伸ばしていくスタイルが主流でしたが、今はみんなの意見を聞いて調整していく「分権型」の方が合っていると感じています。私は技術者ではないので、技術的な部分は現場の社員に任せて、私は会社としての舵取りや将来像を考える立場だと捉えています。
今は札幌市内の建設業界全体に仕事が多く、営業しなくても案件が入ってくるような状態ですが、これは一時的な状況だと思っています。
10年、20年後に仕事が減ったとき、人員が余ることも想定されます。そのときにどう舵を切るか。2代目として少し規模が大きくなったこの会社を、次の世代にどう繋いでいくかというビジョンを考えることも、自分の役割だと思っています。
これまでで、一番苦労されたことは何ですか?
入社当初、現場で全く話を聞いてもらえなかったことです。
職人さんたちは「どうせ分からないんでしょ」と、取り合ってくれないんですよね。でも、自分が勉強して話が通じるようになると、少しずつ距離が縮まっていきました。
ただ、聞いてくれるようになっても、すぐに動いてくれるわけではありません。最終的には「信頼関係」がすべてなんですよね。相手がどんな会話を求めているのか、どんな話題で心を開いてくれるのか―。たとえば職人さんが昨日飲んだ酒や食べたものの話をしたいのなら、自分もそこにちゃんと付き合う。そうすることで距離が縮まり、「君が言うならやってあげるよ」となっていく。やっぱり人間同士の付き合いなんですよね。
お仕事の中で、一番やりがいを感じる瞬間はどんなときですか?
建物が完成したときはもちろんですが、日々の段取りがうまくいって、「ギリギリ間に合った」といった瞬間の積み重ねに、一番やりがいを感じます。
建設業って「完成したときが成果」と思われがちですが、実際は日々の工程一つひとつが勝負なんですよね。
そういう小さな達成の積み重ねが、最終的に大きな成果につながる。それが建設業の面白さだと、30代半ばでようやく気づきました。
1本足打法は危険。親和性ある“第2の柱”を持つ強い会社へ
.png)
最後に、この業界の今後について、どんな見立てをお持ちですか?
再開発も多く、しばらくは仕事はあると思います。でも、この“売り手市場”はいつまでも続きません。たとえば2030年前後の新幹線開通が1つの節目になると考えています。だからこそ、今のうちから“選ばれる側”になる準備が必要だと思っています。
仕事の柱を2本目・3本目と増やすことも大事です。
それはたとえば「居酒屋をやる」といった異業種に飛び込むわけではなく、電気工事と親和性のある事業を指しています。業務範囲を固定せず、柔軟に動けるようにすることで会社の生き残りにもつながると考えています。
個人としても、「これは自分の仕事じゃない」と線を引くのではなく、何でも対応できる柔軟さを持てるようにしていきたいですね。
インタビューに応えてくれた人
- 趣味:
- ゴルフとスキューバダイビング。スキューバダイビングはライセンスを取得している。
1981年生まれ、北海道虻田郡京極町出身。 北海学園大学経済学部経営学科を2004年に卒業後、家業である株式会社フジソーに入社。経理や事務などのバックオフィス業務を担当し、2021年に代表取締役に就任。現場との信頼関係を大切にしながら、次世代へのバトンを見据えた経営に取り組んでいる。