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株式会社Home Agent 代表取締役・中川紀仁さん|起業1年目ですすきのの大型ビルの管理契約し、年商1臆円を実現した計画力

札幌圏
建設・プラント・不動産

不動産の仲介業・管理業を営む「株式会社Home Agent 」(札幌市中央区)は、2015年2月に創業。立ち上げから5カ月ですすきのの一等地にあるテナントビル・第1グリーンビル、第2グリーンビルの管理業務契約を結び、札幌のビル管理業界で一躍有名に。起業1年で年商1億円以上を達成し、現在はビル警備や飲食業の子会社も展開しています。代表取締役の中川紀仁さんはこれまで、さまざまな企業でトップセールスに輝き、アパレル店の統括店長やSV、歌舞伎町でナイトワークなどで成績を残してきた実力派。成功までの経緯を伺うと、成功の裏に徹底した事業計画性があることが分かりました。

起業5カ月ですすきのの大手ビルの管理会社へ

起業5カ月の会社が、すすきのの第1、第2グリーンビルを管理するというニュースを聞いた時は驚きました。どのような経緯で契約に結び付けたのですか?

札幌の不動産管理業者は昔からの企業が多く、あまり競争が行われてなかったので、ここを狙おうと起業しました。すすきののビルの管理費用は、全国企業と比べるとものすごく高い。東京に倣って、管理費用は適正価格にするのはもちろん、宅地建物取引士や賃貸不動産経営管理士といった不動産管理の資格を取得するなど、お客様に信頼してもらえるよう、しっかり準備しました。不動産管理の免許を持っていて、ちゃんとしたサービスを提案できて、他社より安価ですから、契約できる自信が100%ありました。

リサーチや資格取得など、事前の準備をしっかりしたからこそ生まれる自信ですね。不動産管理は契約して終わりではなく、収益を上げていくことが事業のポイントになります。ビル会社から大きなリターンを求められましたか? 

元々、大手企業が管理していたビルだったので、起業して半年足らずの僕らはあまり期待されていませんでした。「前の会社はビルの占有率を40%維持できてなかったから、5年で80%にしてくれればいいよ」と言われ、「なめられた」と思う一方で、やる気に繋がりました。

見返すために、どんな目標を立てましたか? 

従業員と話し合って決めた目標は、1年で90%。結果はビル占有率98%を達成して、札幌中で大変な噂になりました。「1年かからずにテナントを埋めた」という口コミが広がって、いろんなビル会社から依頼をもらうようになり、今では当社がすすきので一番ビルを管理している会社と自負しています。

最初の契約が大きな宣伝効果になったのですね。北海道内や道外にも反響があったのでしょうか。

東京や大阪、福岡、仙台からもビル管理業の依頼をいただきました。現在はシンガポールなど東南アジアで事業を展開するため、ホールディングス会社の設立を進めています。でも、すすきのにはビル管理に不満を抱えていても、新しい管理業者を探すのを面がって損している大家さんがまだまだいるんですよね。北海道で一番、利益を上げられるのはやっぱりすすきのですし、離れられません。

新しい管理者を探している大家さんには、どんなメリットを伝えていますか? 

当社は、テナント募集や請求書作成といった「プロパティマネジメント業務」と、建物のメンテナンスや設備を管理する「ビルマネジメント業務」の両方の実績が豊富。有資格者も在籍していますから、「もう少し管理委託料を抑えたい」「ビルの修繕や維持管理の保全を安心して任せたい」と悩んでいる方にしっかりアプローチし、シェア率を増やしていきたいです

コロナ禍をきっかけに、「壊す×作る」経営方針に転換

ホームエージェントの看板
すすきのを拠点に活動する「株式会社ホームエージェント」

コロナ禍はテナント撤退など、不動産業界は厳しかったと思います。御社にも影響がありましたか?

コロナ禍で多くの不動産仲介業者が撤退や倒産を余儀なくされましたが、幸い当社は大きな影響はありませんでした。仲介業と管理業の両方を展開しているからこその強みですね。管理しているビルのテナントが撤退したら、新しいお店を入れて仲介手数料をいただけるので、ビルの管理を任されているうちは、安泰だと感じました。とは言え、撤退した店舗の内装を解体して、新しい入居者を募集し、内装工事するのにもお金がかかります。これまでは「仲介×管理」を事業の方針にしていましたが、コロナ禍を経験して、「壊す×作る」に経営転換しました。

「壊す×作る」という経営方針は、ビルの建物や内装などの解体業も始めたということでしょうか?

文字通りの解体業務のほかに、「常識を壊して、もう一度新たに作り上げる」という方針も含まれています。その一つに、これまでテナントに入れなかったホストクラブを、入居させてみるという施策がありました。まだまだホストクラブは怪しい印象がありますが、現在はしっかり法人化しているところが多いです。ビルオーナーに納得いただけるよう、所得証明があって、納税もしっかりしていて、社会奉仕活動もしているような優良店だけに絞って営業しました。そうしてオープンしたお店は大成功。家賃や広告費などで売り上げがアップし、ビルの入館者数も3倍に増やすことができました。

入館者数3倍はすごいですね。当初、反対していたビルオーナーは、この成果を受けてどういう反応でしたか?

とても喜んでくれました。経営状態をより良いものにするには、ビル自体の資産価値を上げ、ビルオーナーの収入を増やす努力は欠かせませんから。当社はビル管理とテナント仲介の両方に携わり、効率よくテナントで埋めることで、ビルオーナーの収益を増やしてきた多くの実績がありますので、継続して管理業務をお任せいただけているのでしょうね。

不動産業はお客様の人生を考える大切な仕事

ホームエージェントの事務所の様子
ホームエージェントの事務所の様子

中川さんは元々接客業をされていましたが、不動産業をはじめるきっかけは? 

不動産管理業には前々から目を付けていたんですが、札幌に拠点を移した2003年、あるビル管理会社に個人事業主としてお仕事をいただきました。契約の流れや収益の上げ方を勉強し、不動産管理業が安定した収益が見込める業種だと気付きました。ビルを購入して運用すると、利益が発生するまでどうしても数年はかかります。でも、管理業はビルを買うことなく運用できるので、支出がほとんどありません。経験を積んで、ちゃんとしたサービスを提供すれば、起業しても安定した経営ができると確信しました

事業を始めてみて、不動産業の印象は変わりましたか?

不動産業は衣食住というライフラインの一つで、土地や建物をただ売ったり、貸したりするだけの事業ではないことを痛感しました。マンションを一戸貸すにしても、お客様の10年後の生活を考えて提案しています。1、2年後にはお子様が生まれて、ライフスタイルが変わっているかもしれないですからね。相続不動産もいい例です。先代の想いとともに次の世代へ建物を引き継ぐことは、契約やお金といった話だけでは済まないのです。

日本を支えた人たちが安心して暮らせる場所を作りたい

不動産業を中心に、ビル警備や飲食業も展開していますが、今後の新たな目標はありますか?

実は、僕のビジネスモデルはほぼ完成していて、次のビジョンを考えるのは、若い従業員たちの役割。20代前半の若い従業員の意見を尊重しないと、会社がダメになっていきますから、「新しいことをやりたい!」という従業員の熱い想いには、後押ししていくつもりです。でも、不動産業とは別に、僕は老人ホームを作る夢もあります。

これまでの事業とはまた異なる業種ですね? 何がきっかけになったのですか? 

これから高齢化していくのは、バブルを経験して、日本経済を盛り上げた人たち。当社にもその経験があるベテラン従業員がいて、これまでの功績を聞くとどれも素晴らしいものばかりです。その一方で、昔は活躍しても今は仕事がなかったり、住むところがなかったりと、大変な思いをされている人もいる。僕が生きている今の時代を作った功労者のみなさんに、それなりの生活を提供してあげたいと思ったんです。

先人たちへの感謝の気持ちが強いのですね。 

そうですね。僕は昔、東京で事業に失敗していろんな人に迷惑を掛け、北海道に来てからもたくさん支援してもらったからこそ、今があります。人に救われた僕がどうやって恩返しできるか考えた時に、社会貢献や社会奉仕が浮かびました。不動産屋である僕ができることといえば、施設を用意することですが、将来はその施設で働く人材も僕の会社で育てられるようにしようと考えています。

(取材・撮影:北山大樹、文・編集:片野睦)

インタビューに応えてくれた人

中川紀仁さん
株式会社Home Agent 代表取締役 中川紀仁さん
趣味:
ジム通い、エステ

1977年東京都立川市生まれ。18歳から東京の訪問販売の営業やアパレル店のSV、ナイトワークなどを経験し、2000年に飲食業で起業。その後、リタイアして札幌のビル管理会社と業務委託契約し、6年間連続で営業成績が全国1位に。2015年に株式会社 Home Agent、2018年に飲食事業の株式会社HIKARIagentを設立。2020年にビル管理会社を立ち上げ、ビルの警備や管理事業を開始している。