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株式会社創伸建設 代表取締役・岡田吉伸さん|会社も町もより良いものにして次世代へ

札幌圏
建設・プラント・不動産

商業施設やマンションの建設を通じて、地域社会との交流に取り組んでいる株式会社創伸建設代表取締役の岡⽥さん。家業であるこの会社を継承するまでは、社員はたった3人。そんな小さな会社が社員15人を抱える企業に成長するまでをインタビューしました。また、今後も長く会社を続けるために取り組んでいることも注目です。

大手ゼネコン勤務を経て家業の建築業を継承

株式会社創伸建設のイベントの様子
建設現場の地域住民と交流の機会を設けている創伸建設

まずは、ご両親が経営していたころの創伸建設について教えてください。

両親を含めて3人くらいの小さな会社でした。父親が会社を立ち上げた時私は9歳で、父親の仕事が「0を1にしてすごい」と感じたのを覚えています。しかも堅実に経営していて借金はなく、私たち兄弟は大学まで行かせてもらっていますから、本当に感謝しています。

会社を継承すると子供の頃から決めていたのですか?

うちは石川県から北海道に移住した分家で、代々建築の仕事をしています。私の兄は小さい頃から「建築業はやらない」と言っていましたから、「じゃあ僕が継ぐんだろうな」と漠然と思っていましたね。

会社を継承する前は、ゼネコンに勤めていたのですね。

はい。大手のゼネコンに勤めていました。現場監督としておおよそ1年から1年半のプロジェクトを何度も経験しています。現場監督の仕事は社長業と似ていて、現場ごとに会社を興すような作業でした。

大きな仕事を任されている中、なぜ家業を継ごうと思ったのですか?

東日本大震災が大きなターニングポイントですね。震災で崩壊した建物を見て、自分たちは建物ではなく、「そこに住む人の想いを作っている」と痛感しました。大手企業ではどうしても会社の利益が優先になってしまうので、お客さんのため、町のためのものづくりがしたいと思うようになりました。

会社継承後、新しい仕事と人脈づくりに奔走

株式会社創伸建設の社内行事の様子
事務所の外に出て、他の経営者や学生たちと朝会を行っています

2018年に創伸建設に入社。翌年2019年に会社を引き継ぎ、苦労したことはありますか?

大変なことばかりでした。両親の代の仕事は、役所から発注された学校の修繕や、住宅の手直しなどがほとんどでしたし、現場監督だった自分は直接は作業できません。職人さんがいる協力会社を集めるのに苦労しました。営業先もありませんので、人脈作りも一から始めました。

元々、社員は3人ほどしかいませんでしたが、今は20人が働いています。どのように集めましたか?

勤めていたゼネコンの仲間7人が、うちの事業に興味を持って来てくれました。みんな道外出身なのに、わざわざ移住してくれました。

それはすごいですね。組織体制も整えることができたのではないでしょうか?

はい。2021年建設事業の実務を任せられる会社のNo.2と、経理などのバックヤードを管理を担当するNo.3が入社しました。建築系の中小企業の多くは、お金のことは税理士、会社の内部のことは社労士に任せている中、当社では役員が担当しています。

今より良いものを「次の誰かのために」につなぐ

株式会社創伸建設のイベントの様子
北海道ボールパークFビレッジ内の「TruffleBAKERY」の建設を担当

今特に重視している企業理念を教えてください。

「次の誰かのために」を理念に掲げ、会社はもちろん、当社が関わった町を今より良い状態で次の世代につなげることです。例えばコンクリートの建物です。100年後も残るものを、建てた会社が100年経たず潰れるのは無責任です。うちは建物再生事業にも力を入れ、2022年に「株式会社再創」を立ち上げました。

会社を常によりよい状態に保つため、新しいことに取り組んでいるのですね。

現状維持は衰退することだと思っています。失敗が怖くて冒険できない方も多いと思いますが、新しいことを始めるなら、失敗して当然です。ゼネコン時代は失敗は会社としての責任問題になるのでなかなか新しいことを始められませんでしたが、今は勇気を持って挑戦しています。

社員にもその想いを共有しているのですか?

はい。会社をもっと成長させて次の世代に引き継ぎたいので、「創伸建設は北海道を代表する企業になって、利益を町に還元する」と社員に繰り返し話しています。町への貢献としての出資を続けることを、当たり前だと考えてほしいです。

社会貢献が会社の付加価値に

株式会社創伸建設のイベントの様子
岡田代表取締役は、株式会社川見のCEOとして豊平川の河川敷でイベントなどを企画・運営

「次の誰かのため」に、ほかに活動していることはありますか?

売上を伸ばすことは大切ですが、それだけでは理念に則っていないので、社会貢献にも力を入れています。「株式会社川見」「一般社団法人本気のリーダーの朝会」「一般社団法人先輩の風協議会」など、人と人をつなぐ社団法人も作りました。創伸建設も再創も、社団法人も団体の活動内容は目的はそれぞれ違いますが、「次の誰かのために」という想いは同じです。また、地域交流を積極的にしています。

株式会社創伸建設が開催するイベントの様子
建築現場の地域で行うイベントにはキッチカーを出店することも

具体的にはどのような地域交流に取り組んでいますか?

建築現場に自動販売機やキッチンカーを導入して、建築関係者と地域の方の交流の場にしました。将来的には保育施設を作りたいとも考えています。建築現場を地域の方にとって居心地よくすることで、建物に愛着を持ってもらいたいですね。

地域の人との交流を大切にしている建築会社は珍しいですね。

社会貢献を通じて地域の方と良好な関係を築いているのは、うちの会社ならではかもしれません。建物の見た目では、他の企業と差別化がほとんどできません。だからこそ、建築現場がある地域との関わることは、今後さらに重要になるはずです。

(取材・撮影:北山大樹、文:桑田奈々子、編集:片野睦)

インタビューに応えてくれた人

岡田吉伸
株式会社創伸建設 代表取締役 岡田吉伸

1981年生まれの札幌市出身。大手ゼネコン勤務を経て、2019年に株式会社創伸建設を継承。民間建築工事を中心に事業を拡大し、社会貢献にも注力。