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株式会社トラストクルー 代表取締役・國見幸平さん|窓ガラス清掃から建築まで。高所ロープ作業の未来を探る

札幌圏
警備・清掃
株式会社トラストクルー 代表取締役・國見 幸平さんの画像

大好きなスノーボードを続けるため、20歳の時にストレスを溜めずにお金を稼げる仕事として清掃業を選んだ國見幸平さん。それから20年以上経ち、法人化した清掃会社のトップに立つ今も、自ら現場で働き続けています。コロナ禍によりホテルの清掃業務が激減した今、ビルの窓ガラス清掃で磨いた高所ロープ作業の技術で新たな道を切り開きます。

誰もが参入しやすい清掃業界で、他社には真似できない技術を提供

高層ビルやホテルで作業する株式会社トラストクルーの画像
高層ビルやホテルなどの窓清掃を行う北海道で数少ない会社

御社が清掃のプロとして活躍しているのは、どんな場所でしょうか?

オフィスや個人宅の清掃を幅広く手がけ、以前はホテルの定期清掃の業務が多かったのですが、コロナの影響で受注が4割は減りました。宿泊客が減って清掃の予算がカットされたり、ホテル自体が閉館したりしたので。その分、除菌作業の受注が増え、北海道で普及が進むエアコンの分解洗浄もしています。今はロープアクセス、つまり屋上から吊ったロープとハーネスで高所の作業をする分野に力を入れています。

ロープを使った高所作業は、清掃業の中では特殊な分野ですね。

一般的な清掃業務は、大工さんのように何年も修業が必要な分野ではありません。1年ぐらいの経験で、ある程度のスキルは身に付きます。でも高所でのロープ作業は、一歩間違えれば死と隣り合わせの仕事です。海外のロープアクセス専門の会社では、万が一誰かが作業中に急病で動けなくなっても救助できるよう、スタッフ全員がロープレスキューの技術を持っているのが常識なぐらい厳しい世界です。

ロープの技術は、窓ガラスの清掃以外にも展開できるものなのでしょうか。

東京ではロープアクセス業の会社がガラス清掃と建築系に分かれていて、建築はさらに雨もり修理、高所看板、外壁や建具の隙間を埋めるシーリングなどに細分化されています。北海道では建築専門でロープアクセスをやっている会社がないので、当社は窓拭きもやりながら建築部門に進出していっています。作業する人間の命がかかっている仕事ですから、費用対効果の面でも満足できる仕事を選べるようになりたいですね。

東京で勉強し、全国各地のロープアクセス会社とつながりも

株式会社トラストクルーの訓練の様子の画像
東京の会社から技術を学び、日々訓練しています

東京のロープアクセスの会社さんと、つながりがあるのですか?

SNSを通して愛知県に知り合いがいて、一緒に東京の会社に顔を出そうと誘われまして。ちょうどその頃、東京の「4U(フォーユー)」というレインボーブリッジを塗装したロープ専門の工事会社が、全国の同業者のコミュニティーを立ち上げるところだったんです。北海道から東京へ技術を勉強しに来たということで親切にしていただき、北海道より5年、10年ぐらい進んだロープの技術を学ばせてもらうことができました。

5年、10年ぐらいですか。ずいぶん差があるんですね。

東京は建物と建物の間隔が狭く、外壁工事のために足場を組めない物件が多いので、補修や塗装などのためにロープを活用する技術が、地方より進化しているんですよ。東京から最先端の技術やシステムを北海道へ持って帰るために頑張って、「4U」さんに道内のリゾートホテルの仕事を紹介していただいたこともあります。ホテルは客室からの眺めも大事ですから、外壁の作業のために足場を組むのは難しいんですね。

北海道のホテルが、東京の業者さんに発注したということですか?

北海道にロープ作業をやる会社があるのを知らなかったお客様が、全国各地に出張する会社をネットで探して東京の「4U」さんに相談したら、当社を紹介してくれたという流れですね。おかげさまで発注元の社長様に大変喜ばれて、ホテル業界は外壁で困っている人がたくさんいるから頑張ってと言っていただけました。ホテルはこれからも新規のお客様を開拓して、いつかは沖縄でも仕事ができたらと考えています。

どこか一つとがっていないとダメ。全国的に差別化を図りたい

株式会社トラストクルーの清掃の様子
北海道ではまだ珍しいロープを使える清掃専門会社

明るい将来展望を思い描ける会社であり、伸びしろのある分野ですね。

道外の現場への進出も予定しています。神奈川県の「クライミング・ワークス」さん、福島県で高さ57mの会津慈母観音像にコロナ退散祈願のマスクを付けた会社なんですが、そちらに声をかけていただいて、宮崎県にある高さ100mの仙台大観音の仕事への参加を考えています。上下左右へ自在に動ける新しい工法が評判の福岡県の高所看板施工チーム「RASTAQ(ラスタック)」さんとも、話し合いをしているところです。

「北海道でこれをやりたい」という計画もありますか?

ロープで何でもできるのは北海道では当社だけと言い切れるぐらい、ロープの方に会社のメイン業務を振っていこうかということは頭にあります。北海道は雪で建物の外壁がダメージを受けやすいですから、本州よりビジネスチャンスがあるかもしれません。自分たちが導入した新しいロープの技術に、一緒に仕事をする外部の人が興味を持ってくれて、その人がさらに別の現場で広めていく流れができたらいいですね。

得意分野に特化して、攻めの姿勢で仕事をしたいと。

会社を法人化してから2年ぐらいは、どんな仕事でもがむしゃらに受けてきましたが、今は180度変わりました。料金が安ければどこの清掃会社でもいい仕事より、難しい大変な現場で國見の会社にしか頼めないという仕事を受けたいんですよ。どこか一つとがった部分を大事にして、全国的に他社さんとの差別化を図りたい。自分がカッコいいと思える仕事をして、それが響く得意先が当社のファンになってくれたらと。

「自分が若い時にこんな会社があったら」と思える会社に

株式会社トラストクルーの訓練の様子
新しい技術をスタッフと共有し、常に腕を磨きます

経営者として、従業員の皆さんにはどう接していますか?

「経営者あるある」だと思うんですが、社内のみんなはどうすれば喜んでくれるだろうか、どうすればボトムアップで自分がやりたいことを提案してくれるだろうかと考えた時期があったんです。でも、そうすると自分の考えが濁ってくるんです。自分は本当にやりたいことが見えなくなってくる。今は「俺はこれをやりたいから、この方向で行く。面白そうだと思ったら付いてくれば?」と、トップダウンのスタイルです。

チームの先頭に立って動くタイプのリーダーなんですね。

経営のことは経営者が決めなきゃダメなんですよ。会社の業務全体や収益を一番把握しているのは経営者ですから。それと、現場の人間であり続けるのも私にとって大切なことです。新規の仕事を獲得するために現場を離れて営業に回った時期もありますが、そうするとどうしても自分の軸がブレる。いつか年を取ってロープから離れる時が来るとしても、それは今じゃない。会社の色を変えないためにも現場に出ます。

これから活躍する若い人たちに伝えたいことはありますか?

今は投資などで稼げる時代なので、体を動かす仕事や組織に所属することに興味がない人も多いですよね。人生長いですから、これで一生食っていこうと思える仕事に巡り合えるまで、焦らずいろいろ経験してみればいいと思います。私自身は今も現場が楽しくて最高の人生です。これからも「楽しそう」「カッコいい」「専門的」にこだわってとがり続け、当社に入らないと経験できない仕事の場を提供していきます。

(取材、撮影・北山大樹、文・三本木香、編集:片野睦)

インタビューに応えてくれた人

國見幸平さん
株式会社トラストクルー 代表取締役 國見幸平さん
趣味:
スケートボード・スノーボード

1982年生まれ、香川県東かがわ市出身。高校卒業後にニュージーランドへ1年間留学。帰国後、ビル管理会社・アイング株式会社の現場マネージャー、建設会社・有限会社明実工業の事業部長に従事。2017年に株式会社TRUST KREWを設立する。