株式会社SBAパートナーズ株式会社 代表取締役・佐良土雄亮さん|M&Aや企業再生を視野に入れ、10年後を見越した経営戦略を提案
2018年創業の「株式会社SBAパートナーズ株式会社」は、中小企業や小規模事業のM&A仲介やアドバイザリー業務、事業承継のコンサルティング業務を行っています。2022年には、経営学修士(MBA)を取得し、強みを生かせず経営危機に陥った会社の経営者となって企業再生を図るファンド事業を展開。本音で経営者とぶつかり合い、経営改善を進める代表取締役の佐良土雄亮さんにお話しを伺いました。
危機感を持ちながら、経営者と一緒に会社を発展させる
貴社、株式会社SBAパートナーズ株式会社の業務内容について詳しく教えてください。
当社は、「M&Aアドバイザリー事業」「コンサルティング事業」「ファンド事業」の3つの事業で企業の経営をサポートしています。M&Aアドバイザリー事業では、企業の買収・売却、事業承継のサポートを行い、クライアント企業の成長に繋がるM&Aを実施。コンサルティング事業では、最適な売買を考える「M&A戦略」、他社の案件を客観的に見直し、希望条件を推進する「M&Aのセカンドオピニオン」のほか、M&A後の経営統合プロセス「PMI」をサポート。シナジー創出をできるだけ早く、最大化できるよう取り組んでいます。ファンド事業では、経営継続が難しい企業の株式を当社が取得。経営者として企業再生を進めています。
M&Aを中心に会社を支える経営コンサルタントのような業務を行われているのですね?
はい。経営コンサルタントにはそれぞれ得意分野があり、僕はM&Aや経営の統合です。お取引する業種は商社やサービスが多いですが、限定していません。常に危機感を持って経営している企業でしたら、どなたでも歓迎しております。
貴社にご相談する方は、危機感を持っている方ばかりなのでしょうか?
実は、危機感を持って経営している方は少ないです。M&Aや企業再生は企業の転換期であり、「思い切って成長したい」「成長できないと倒産する」という状況の企業に向けたサービスです。「ダメなものはダメ」と正直にお伝えしているので、経営者のみなさんにも緊張感を持って取り組んでいただきたいのが本音です。本気で向き合った上で、根本的な問題点や市場の変化、未充足のニーズを分析し、どうしたらよりよい経営になるか目標を設定しています。
佐良土さんは正直な意見を経営者の方々に伝えているのですね。一般的なアドバイザーにはない、アドバイスの例はありますか?
例えば会社を買いたい方は、経営者本人が交渉したい企業に手紙書いて、直談判する方法を提案します。ほとんどの企業はアドバイザーに丸投げして何もしません。もちろん僕もアプローチレターを送りますが、M&A会社から送られてくるDMは大量で、見ずに捨てられることが多いです。でも、業界の状況が分かる同業者から直接「資本提携を内々でどうだ」って手紙が届いたら、興味を持って読んでくれます。実際、僕のお客さんは欲しい会社に何回も手紙を書いて、話を進めています。
M&A企業増加を好機に捉え、自社の付加価値を高めるサービスを提供
これまでさまざまな企業で財務や会計に関わる仕事に従事していた佐良土さんですが、M&Aで起業しようと思ったきっかけは?
ある会社で働いている時、経営を後継者に引き継ぐ事業承継に携わりました。その時に「M&Aも面白そうだな」と興味を持ったのがきっかけです。M&Aには経営戦略や法律、会計、労務などいろんな知識が必要で、どんな仕事にも応用できると思ったのも理由ひとつです。
起業後、順調に依頼がありましたか?
起業した2018年当時は、北海道では独立した人のM&A会社が少なく、想像以上にお仕事をいただけました。弁護士や行政書士などの士業の方からの紹介や、ホームページを見てのお問い合わせが中心です。頼りになりそうなアドバイザーが他に見つからなかったのでしょうね。
コロナ禍で経営が厳しくなった会社も多かったと思います。
コロナ禍と同時期に、「M&Aが儲かる」と大した知識もなく起業する人が増えましたが、僕は会社の付加価値を高めるいい機会だととらえました。M&Aだけじゃなく、経営戦略や企業再生などのアドバイスもできるように、経営学修士(MBA)の勉強を始め、2023年に資格を取得。より経営戦略の知識が深まったので、顧客企業向けにM&A担当者の育成サービスも進めているところです。
顧客企業の従業員がM&Aに詳しくなると、経営者にとってはメリットですね。
はい。M&Aの手続きでも、専門性が高い部分を除けば、クライアント自身で手続きができます。M&Aのノウハウを蓄積するプランを設定し、月1回ミーティングを行い、情報提供します。もし、M&Aの案件が出た場合は、一緒に進めることも可能です。何より僕が対応しなくていいので、コストが抑えられます。
とても面白そうな施策ですね。どんな企業に利用してほしいですか?
僕はやっぱり、「10、20年後、会社はどうなるだろう」と危機感を持った会社とお付き合いしていきたい。毎週会議して、今からできる対策を打っていくイメージです。1年間などの期間限定の契約でも、ある程度の方向性が見えますし、M&Aも企業再生もできます。M&A後の統合プロセスであるPMIに繋げていくことも可能です。
良い人材や顧客、高いスキルと持つ会社を見捨てないためのファンド事業
顧客企業のM&A担当者の育成サービスのほかに、力を入れたい事業はありますか?
企業再生ファンド事業です。今後は市場環境の変化のスピードがどんどん早くなっていくでしょう。その変化に対応できなかった企業は、良い顧客や人材、高い技術力、営業力があっても消えてしまう。そんな企業がなくなってしまうのはもったいないですから、僕が買収してちゃんと立て直したいと思っています。
貴社にはどんな状態で相談に来られるのですか?
給料が払えなくなるほどキャッシュフローが悪化した状態になって、ようやく相談に来ます。もっと早いうちに手を打っていれば会社も継続できたのに、自分たちで頑張ちゃって、当社に来た時にはもう手遅れということが多々あるんですよね…。
ギリギリまで耐えて、限界を超えてから企業再生などの相談を持ち掛けられるということでしょうか。
はい。企業再生はよく救急処置で例えられるのですが、現金が手元にないそんな状態の会社はもう瀕死です。ケガをしている人が会社で、血は現金。僕はまず、病院に運ばれてきたら、どこから出血しているのか見つけて、早く止血します。血が足りなければ、輸血というファイナンスが必要になります。もう会社を動かす現金が足りないですから。デッド(借金・負債)、エクイティ(出資)、アセット(資産売買)などで現金という血を作らなきゃいけません。
現金を捻出した後は、会社はうまくまわっていくのでしょうか?
一命を取り留められても、自分で血を作って、体に巡らせられるように、次の治療に移ります。それには不採算部門、子会社の売買や整理、社員の配置換えなども含まれますが、多くはもう倒産や破産するしかないという状況ばかりです。
企業再生の相談をいただく段階ですでに、経営は瀕死の状態で立て直すことが難しいということですね。
こんな酷い状態になる前に、健康診断じゃないですけど、経営相談できたらいいのですが、その費用が払えるなら会社なら、経営が瀕死状態になっていないはずです。それでも、その会社の規模や業種、強みを分析してもったいないと感じたら、企業再生ファンド事業で引き取りたいと思っています。
インタビューに応えてくれた人
1989年北海道岩見沢市生まれ。簿記や財務会計の講師を経験した後、複数の企業で財務や会計に関わる業務に従事。業務の中でM&Aに興味を持ち始め、経営戦略を学んだ後、2018年に起業。2022年には経営学修士の資格を取得。現在は、企業のM&A担当者育成や企業再生ファンドに力を入れている。