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korokoron株式会社 代表取締役・疋田恵子さん | 商社の秘書の経験を生かし、経営者と社員のコミュニケーションギャップを埋める

札幌圏
コンサルティング・リサーチ業界・専門事務所・監査法人・税理士法人
korokoron株式会社の代表取締役・疋田恵子さん

korokoron株式会社の代表取締役である疋田恵子さんは、商社秘書の経験と幅広い人脈を生かし、経営者やその企業で働く社員のメンタルサポートや外部顧問業に取り組んでいます。同社が企業に好評の理由は、疋田さんの高い傾聴力と手厚いアフターフォロー。秘書時代に身に付いたスキルを生かせる事業を始めたきっかけは、経営者と社員の意思疎通の難しさを解消し、コミュニケーションを円滑にするためでした。

経営者と社員のコミュニケーションを潤滑にする事業を作る

korokoron株式会社の代表取締役・疋田恵子さんの企業メンタルサポートの様子
「伴走型『社内環境再構築ラボ』」事業の面談はまず、思考を整理するために相談者の空気感を読みながら絶妙に質問。その後は聞き手に徹して、話終わってから次の質問に移るそうです

まずは貴社の事業について教えていただけますか?

主に「伴走型『社内環境再構築ラボ』」とコネクティングの2つの事業を展開しています。事業の8割を占める企業メンタルサポートは、北海道に本社や支店がある中小企業を対象に、社員のメンタルケアをはじめ、企業で起きているさまざまな問題を解決しています。現場での状況を感じ取るために、顧客の全国にある営業所にも出向き、社員全員と面談して、問題の早期発見、早期解決につなげます。コネクティング事業では企業の外部顧問として商品やサービスの企画開発から販路開拓までを、ワンストップで請け負っています。

商品・サービス開発の企画から販路開拓までを一貫して対応できるのですね。「伴走型『社内環境再構築ラボ』」では、どんな強みがありますか?

契約企業とは、社員のみなさんがLINEでいつでも相談できる環境を整えていることです。話を聞く姿勢など信頼してもらえるように努め、初対面でも心を開いてお話しいただけていると自負しています。また、当社は弁護士や医師、メンターなどの専門家と提携し、幅広い問題に対応できるのも強みです。同じようなサービスを提供している企業は他にもありますが、ここまで手厚くサポートしているのは当社だけだと思っています。

前職では伊藤忠商事株式会社の秘書だった疋田さんが、なぜ企業をサポートする会社を立ち上げたのですか?

korokoron株式会社の前に別の事業で起業した時に、顧客である企業の経営者と社員が意思疎通を上手くできていない様子を目にして、商社で働いていた時と同じ光景だなと感じました。その時に改めてコミュニケーションの大切さを痛感し、心理学やコーチングの勉強を始め、今の会社を立ち上げました。

女子スキージャンプ勢藤優花選手とのツーショット
平昌オリンピック女子スキージャンプ勢藤優花選手のメンタルコーチも務めました

秘書業務でも人と人の間を取り持つことはあったと思いますが、まったく知らない会社での対応は難しいこともあったと思います。どんな時にやりがいを感じましたか?

サポートしている企業の役員の方に「なくてはならない存在」と言っていただけた時は、とてもうれしく、やりがいを感じました。創業期からのお付き合いで、ご迷惑をかけた時期もあったので、自分がやってきたことが間違いではなかったと思えました。

今後はどんなことに力を入れていきたいですか?

産業医の先生と一緒にお仕事することもあり、今後はパックなどのプラン化を考えています。というのも、ある顧客先が社員との向き合い方が大きく変わったのを目の当たりにして、もっと利用してもらいたいと思ったのがきっかけです。このほか、コネクティング事業拡大のため、道内と道外の企業のコラボなども考えています。

守秘義務を徹底し、第三者の立場で社内環境を整える

ロケに帯同したNHKドラマ「永遠のニシパ」の現場の様子
北海道150周年記念ドラマ NHK「永遠のニシパ」では、現場全体のメンタルサポートのためすべてのロケに帯同しました

御社の事業「伴走型『社内環境再構築ラボ』」についてお聞きします。どんな依頼が来るのですか?

「社内で解決できなかった問題を解決してほしい」「新しい事業のために人を増やすのでサポートに入ってほしい」など、理由はさまざまです。労働基準監督署の指導が入った企業の窓口を代行したこともあります。

会社が抱える問題の大小に関わらずお引き受けしていますね。実際、どのように解決しているのですか?

当社には人事権がありませんので、問題がある人を異動させたりすることはできませんが、別の会社の人間だからこそ、企業を俯瞰して見ることができます。研修を開催するなどして、守秘義務を守りながら実際に起きている問題を一例としてさりげなく伝えています。また、部署間でのトラブルでは会議のファシリテーターとして問題点を洗い出し、社員の方々が自分で考えて解決できるように努めています。

先ほど起業のきっかけとして、経営者と社員が意思疎通できていないケースについてお話されていましたが、事業を始めてから対応した事例はありますか?

経営者が社員とのコミュニケーションを軽視しているために、工場で働いている社員が、作っている部品が何の商品に使われるのか「分からないが、知りたい。でも、どう上司に聞いたらいいか分からない」ということもありました。解決方法として私が提案したのは、完成図を指示書に掲載することでした。製造している部品がどんな商品の一部になるのかを示せば、従業員の仕事へのモチベーションが大きく上がると、経営側にお伝えしました。従業員数人の声が面談を通して、会社組織全体のモチベーション向上へ繋がった事例の一つです。

社員一人ひとりではなく、会社のためになるサービスを目指す

korokoron株式会社の代表取締役・疋田恵子さんの企業メンタルサポートの様子
経営者と社員とともに、社内の問題解決に向き合う企業にしたいと語る疋田さん

疋田さんは人事権がない中でも、うまく第三者の視点で企業の問題を解決されています。これまでに悩んだ時期はありましたか?

まだまだ経験不足の頃で、今ではあり得ない考え方なのですが…。事業を始めた当初、私は「顧客の社員と仲良くなりたい」という考えを持ち、社員の要望を頼まれるまま、経営者に伝えていました。社員と経営者の考えるゴールはもちろん違うので、社員が望んでいた結果にならず…。どう対応すべきか四苦八苦した経験があります。

経営者と社員の板挟みになってしまったのですね。どのように乗り越えたのですか?

なぜこの企業が私のサポートを必要としてくれたのかを書き出して、自分の役割をもう一度見直しました。そこで、私は自分の立場を正しく理解していなかったことに気付きました。依頼のゴールは顧客の問題解決なので、私の感情は必要ありません。「そこにあるご依頼に向き合い、問題を整理して経営者へ伝え、具体的解決をしていくことが、私にしかできない仕事」と改めて覚悟しました。

ある意味割り切ってお仕事ができるようになったのですね。何か秘書時代の経験が生きたのでしょうか。

仲介時に伝える相手に合った言葉を選ぶスキルは、今の仕事にも役立っています。意思疎通が困難な人同士でも、私がちょっと表現を変えるだけですんなり伝わったんですよ。それに秘書は買い物や家族のケアなど、役員のプライベートもすべてサポートする場合もあるので、臨機応変に対応できるスキルは必要です。どんなことが急に起こっても、具体的な対処法がすぐ分かり、落ち着いて行動できることは、今の仕事にも生かされています。

(取材:北山大樹、文:桑田奈々子、編集:片野睦)

インタビューに応えてくれた人

疋田恵子さん
korokoron株式会社 代表取締役 疋田恵子さん
趣味:
料理、旅行

1969年生まれ東京都出身。北星女子短期大学を卒業後、伊藤忠商事株式会社に就職して営業アシスタントや役員秘書を経験。2012年に幼少期を過ごした北海道に戻り、2013年にkorokoron株式会社を設立。