3.ad株式会社 代表取締役・相川鮎香さん|健康的な生活をサポートするフルーツアレンジメント専門店の全国展開を目指して
3.ad(トライアド)株式会社(札幌市)は、全国でも珍しいフルーツアレンジメントギフトの専門店です。代表取締役・相川鮎香さんは、美しく盛り付けた贈答用のフルーツにビジネスの可能性を見出し、一から技術を習得。ケータリングやパーティーの装飾などでもその腕を披露しています。豊富な栄養素で健康づくりを後押しする果物をもっと手軽に味わってもらうため、クレープ店「FruitS deco200」を2022年に開業。ドライフルーツの製造事業を立ち上げ、「毎日くだもの200グラム運動」などフルーツ消費拡大を進めています。
全国でも珍しいフルーツアレンジメント専門店を運営
メイン事業であるフルーツアレンジメントについて教えてください。
誰かにプレゼントを用意する時、観賞用にはお花、食べ物ならケーキを贈る人が多いと思います。その両方を叶えたのが、見た目もおいしさも楽しめるフルーツアレンジメントです。厳選した旬のフルーツに合ったカッティングでおいしさを最大限に引き出し、華やかに盛り付けます。個人のお客様に加えて、接待型飲食店やホテル、ケータリング事業者など、BtoBでの利用も多いです。
全国的にもあまりないビジネスですよね?
バーやダイニングの運営会社がサイドビジネスとしてフルーツアレンジメントを手掛けるケースはありますが、2024年4月現在、専門業者は全国でも当社だけのはずです。新しいビジネスなので求人票に業種や職種がなく、厚生労働省に問い合わせても「該当がない」と言われ、困りました(笑)。
フルーツアレンジメントの専門店として、どんなことにこだわっていますか?
フルーツを身近に感じていただくために、産地や生産者を限定せずに常時20種類以上を揃えています。品質の良さも大切にし、スーパーマーケットでは売られていないような高級品だけを扱っています。一番おいしいタイミングで提供することにもこだわっていて、仕入れたフルーツはすべて熟度を測定してから使用しています。
健康で豊かな生活のため、クレープと100%ジュースでフルーツの消費拡大を促す
御社では「毎日くだもの200グラム運動」を推進しているそうですが、どういった取り組みですか?
2000年に当時の文部省(現・文部科学省)と厚生省(現・厚生労働省)、農林水産省が作成した食生活指針です。生活習慣病を予防して健康な生活を送るために、1人1日200gの果物の摂取を推奨しています。野菜の摂取量が1日350gというのはご存じの方が多いのですが、果物はまだまだ認知度が低いので、浸透させたいと思っています。
フルーツを扱うお店ならではの活動ですね。
仕事を通し、ナチュラル志向の方にフルーツが好まれていると知りました。そこから、より多くの方に果物の良さを広めて、健康で豊かな生活を送ってもらいたいという使命感を持つようになったんです。子供からお年寄りまで手軽に食べられる形でフルーツを提供したいと考えて、「クレープ店を開こう」を思いつきました。
2022年1月にオープンしたクレープ店「FruitS deco200」のことですね。
トッピングのフルーツをお好みで選べ、料金は50g、100g、200gと果物の量で変わります。エコにも配慮して果皮をそのまま器にした100%フルーツジュースも提供しています。クレープとジュースそれぞれフルーツ100gのメニューを組み合わせれば、1日分の果物が取れますよ。
アレンジメントで出た食べられる部分はドライフルーツにしてフードロス削減
果皮を器にするのは見た目もキレイですし、とてもエコです。
フルーツアレンジメントやクレープ店では見た目の美しさも重視するので、おいしいのにお客様に出せない部分がどうしても出てきます。でも当社では、そんな部分をすべてドライフルーツにしているので、フードロスもほとんどありません。
そのドライフルーツを販売しているのが、2022年オープンの「FruitS labo」ですね?
「毎日くだもの200グラム運動」を推奨していますが、果物200g分というと、リンゴなら約1個分、ミカンなら約2個分と案外食べるのが大変です。賞味期限も気になりますし、食べるタイミングも限られてしまいます。そこでビジネスマンや主婦など、忙しい人でも手軽にフルーツを食べられるようドライフルーツの製造・販売を思い付きました。
ドライフルーツなら持ち運びも楽ですね。
おやつ代わりに手軽に食べられますし、おなかの中で膨らむので腹持ちがいいです。栄養価が高く、糖の吸収も速いので、登山やキャンプにもおすすめです。当社では、果物の甘さを引き出す厚さを研究して、完全な無添加でおいしいドライフルーツを実現しています。お子様やペットでも安心して食べられます。
人を喜ばせたい一心でフルーツアレンジメントの技術を習得
もともとフルーツアレンジメントの経験があったのですか?
全くありませんでした。事業内容を決めてから、ホテルのシェフやバーテンダーなど、フルーツアレンジメントの技術がある方を見つけては習いに行くのを繰り返しました。
素晴らしい行動力ですね。技術はすぐに身に付きましたか?
フルーツアレンジメントの世界は奥が深く、想像していたよりも習得に時間がかかりました。フルーツのおいしさは、切り方やナイフの切れ味ひとつで簡単に変わってしまうんですよ。お寿司屋さんの魚の捌き方と同じですね。盛り付け方は生け花と同じように法則があって、基本を身に付けた上でのアレンジじゃないと美しくありません。専門店である以上、もっともっと極めようと腕を磨いています。
技術の向上を常に考えているのですね。経営では何か大変なことはありましたか?
フルオーダーメイドのギフトサービスが個人客の方に好評だったのですが、スタッフの増加に伴って仕上がりに差が出るようになりました。材料の原価が同じでも見栄えが違うため、お客様に不信感を抱かせてしまいました。そこで、セミオーダーに転換してデザインを統一することで、誤解なく利用していただけるようになり、売上が倍増しました。
2024年4月現在、10名ほどの社員がいるそうですが、どのように技術を伝えていますか?
入社時に技術研修をし、細かな作業は仕事をしながら覚えてもらっています。アレンジメントにはお客様へのヒアリングもあるので、職人というよりはコーディネーターに近いですね。
今後の展望について教えてください。
「毎日くだもの200グラム運動」をさらに浸透させて、フルーツの魅力を広めたいです。そのための事業拡大としてフルーツアレンジメントギフトの専門店をフランチャイズ展開する予定で、大阪と福岡で動き始めていました。コロナ禍が来て断念してしまいましたが、もう一度チャレンジしたいと思っています。
インタビューに応えてくれた人
札幌市出身。大手メーカーで10年勤務後、2017年に「3.ad株式会社」を起業。フルーツアレンジメント、ケータリング、フルーツカットレッスンなどを手掛ける「FruitS deco43」、フルーツクレープ店「FruitS deco200」、ドライフルーツを製造する「FruitS labo」を展開。