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株式会社エム・エム・ピー 代表取締役・嘉藤田章博さん|調理人の誇りを持ち、多くの人を笑顔にする給食を作り続ける

札幌圏
医薬品・医療機器・ライフサイエンス・医療系サービス
株式会社エム・エム・ピーの代表取締役・嘉藤田章博さん

病院や福祉施設、学校などに給食を提供する株式会社エム・エム・ピー(札幌市)の代表取締役・嘉藤田(かとうだ)章博さんは、元調理師。給食事業の会社への転職を機に、同じメニューを大量に調理することの面白さを知って仕事に励み、2014年に代表取締役に就任しました。近年は発達支援の児童をサポートするデイサービスの運営、慈善活動にも精力的に取り組み、料理の力で地域の人を幸せにしています。

中小企業の強みを生かし、病院や施設のニーズに合った食事を提供

株式会社エム・エム・ピーの栄養士の会議の様子
各施設担当の栄養士は、毎月本社に集まって情報を共有

貴社の事業について教えてください。

病院や高齢者介護施設向けの給食事業をメインに、児童デイサービスも運営しています。当社を筆頭に4つのグループ会社も経営していて、株式会社生和では障害のある人の施設の給食も手掛けています。このほか、札幌市内約50校の学校給食を作る株式会社エス・エム・ピー、食材を仕入れる株式会社エムケーサービス、病院の売店を運営する合同会社ネクストフーズを展開しています。

グループ会社がそれぞれつながりを持って営業しているのですね。強みはどんなところですか?

給食を提供する病院や施設のほとんどに専門知識のある栄養士か調理師を配置しているので、施設ごとのニーズに合ったきめ細かい対応ができることです。給食業界に大手企業が進出し、地元企業での運営が少なくなってきている中、私たちのサービスは中小企業だからこそできることだと思っています。

近年、原材料価格が高騰し続けていますが給食事業の現状はいかがでしょうか?

食材の高騰も収まりつつあるかと思いますが、まだまだ安心はできません。食材費だけでなく、人件費や洗剤、手袋、マスクなどの諸費用も高騰していて大変厳しく、いかに無駄をなくして運営していくかを考えています。会社全体の管理能力の向上や人材育成に力を入れるだけでなく、給食事業にこだわらない業務展開も考えています。

嘉藤田さんは今年還暦を迎えられ、経営の引き継ぎは考えていますか?

次の世代には自分のような苦労を味わわせたくないので、会社を安定させて渡したいと思っています。自分は事業と財務の両方を常に把握してきましたが、会社の規模が大きくなったので次の社長には厳しいはずです。この2つの業務を分担するために、新たな体制を模索しています。

人材不足だからこそ職場環境を整え、従業員を大切にする

エム・エム・ピーグループで働く若手社員の画像
エム・エム・ピーグループでは、若手の採用と育成に力を入れています

最近の給食はアレルギー対応や誤飲の防止など、求められることが増えていますよね。

この20年でかなり様変わりしました。高齢者の誤飲防止対策では、施設の介護士と連携して二重、三重のチェックをしています。アレルギー食対応のためにひとつのメニューでも調理器具を分け、食材を変えるなど、時間も手間もかかります。

それだけ丁寧な対応をするには、人手も必要になりますね。

うちの業界だけに限りませんが、人材不足は大きな問題で日本人だけでは手が足りず、2022年にタイで面接した6人を採用しました。給食事業に不可欠な調理師と栄養士の採用には、グループ独自で調理師学校に奨学金を出して、優秀な学生を確保する計画もあります。

雇用を増やすには、働く環境も大切になりますよね。

人間関係が悪化すると事業も絶対に失敗しますから、従業員が長く働きたいと思える良い職場づくりも大切にしています。社内のイベントとして、普段は施設の利用者さんのために料理を作っている彼らのために、私が職場へ行って手打ちそばや握り寿司を振舞っています。「人は宝」ですよ。

社長自身が料理の腕を披露してくれるなんて、従業員のみなさんはうれしいでしょうね。

食べている人の笑顔を見られる私にとってもうれしいイベントです。それに、従業員が仕事をどう捉えているか確認できる機会だったりします。やりがいを感じているのか、イヤイヤ仕事しているのかが、彼らの職場へ行けば分かりますからね。

チャリティー活動など、社長が率先して慈善事業に参加

株式会社エム・エム・ピーの新任研修での手洗い講習会の様子
新任研修会の様子。手洗いなどの基本的なことも丁寧に伝えています

デイサービス事業についてもお伺いします。デイサービスを始めたきっかけはなんですか?

給食提供の縁で障害者施設を運営する社会法人の理事に就任し、障害のある子供たちをよく見ていたこと。それに、仲間の社長が発達支援のデイサービスを展開していたこともあって、2021年から当社で給食を出すデイサービスを始めました。当時は珍しかったですよ。

事業での社会貢献に加えて、慈善活動にも力を入れていますよね。

当社グループと関係団体で、慈善団体の「平友会」を立ち上げました。ドナルド・マクドナルド・ハウスのサポーターとして病気の子供とその家族を支援したり、社会福祉法人への寄付もしています。

日本テレビ系「24時間テレビ」でのチャリティー活動も、15年ほど続けているのですね。

札幌テレビ本社前で焼き鳥や焼きそばなどのフードを販売しています。コロナ禍では石狩にある自社レストラン「中華しょうりゅう」の前でビアガーデンを開きました。「スタッフは足りているので社長は来なくていいです」なんて言われましたが、結局、焼きそばの調理場を独占して、2日間で540人前を作りましたよ。

調理師として大量調理の面白さにのめり込み、いつしか経営者に

株式会社エム・エム・ピーの代表取締役・嘉藤田章博さん
調理師としてキャリアをスタートし、経営は自己流で学んだと語る嘉藤田さん

嘉藤田さんの経歴をお聞きします。これまでどんな経験を積んできたのですか?

宮島学園調理専門学校を卒業後、すすきのの飲食店に就職して、25歳で独立。和食店経営や観光地のホテルの総料理長など、調理師として経験を積みました。地元の小樽に戻った時、病院の給食業務を請け負う会社に転職。その後、同業他社に再度転職し、病院給食部門の分社化した株式会社エム・エム・ピーの立ち上げに携わり、2014年に代表取締役に就任しました。

経営者になってみて、どんなことに苦労しましたか?

調理師学校しか出ていないので、経営や経理については無知で苦労しました。現場が落ち着いた真夜中に、インターネットを使って自己流で勉強したんですよ。当社は上場企業でもなく、大きな親会社もありませんので、中小企業ならではの苦労は続いていくのではないかと感じています。

社長に就任されて10年になります。経営者としてやりがいを感じている時はどんな時ですか?

自分が思った通りの利益が上がった時や、新しい仕事が取れた時はやりがいを感じます。従業員が生き生きと働き、喜んでいる時もまた、会社が伸びている証拠と感じてうれしいですね。美味しい食事やお酒を楽しみながら、しみじみと喜びを味わっています。

会社を次の世代に渡した後の夢はありますか?

5~6席の料理屋をのんびりやりたいと思っています。一人ひとりの状況を見て料理を出せる店がいいですね。やっぱりおいしいものを一番おいしいタイミングで食べてほしいですから。自宅でもごはんの炊きあがり時間に合わせて炒め物を始めたり、揚げ物は2回に分けて揚げるなどして、できたてを食べてもらえるようにしています。

(取材・撮影:赤坂元、文:桑田奈々子、編集:片野睦)

インタビューに応えてくれた人

嘉藤田章博さん
株式会社エム・エム・ピー 代表取締役 嘉藤田章博さん
趣味:
ゴルフ、旅行

1964年生まれ。小樽市出身。宮島学園調理専門学校を卒業後、すすきのの飲食店勤務を経て25歳で独立。飲食店経営やホテルの総料理長で調理師としてのキャリアを積み、1995年と1999年に給食事業を運営する会社に転職。2014年に株式会社エム・エム・ピーの代表取締役に就任。