平安警備保障株式会社 代表取締役・嶋田洋介さん | 若手社員と作り上げる働きやすい警備会社
工事現場の交通を整理し、イベントなどで大勢の人を誘導する警備業界は今、深刻な人手不足に悩まされています。そんな中、若者を中心とした組織づくりに力を入れているのが平安警備保障株式会社(札幌市)の代表取締役・嶋田洋介さんです。「人や車の流れを整えて地域の安全を守る」を理念に、SNSを活用した広報、採用活動に取り組み、若者に人気の業界を目指しています。
従来の警備業界のように保守的ではなく、挑戦できる柔軟な会社へ
最初に御社がどんな事業を展開しているか教えてください。
札幌市内の工事現場を中心に、交通誘導の人員を派遣する警備会社です。世界中の人を幸せにするために、まずは身近な人を笑顔にすることを理念としています。そこに暮らす住民のみなさんや、その場所を通行する市民の方を大切にしながら業務に当たるよう、従業員に徹底しています。
競合他社にはない御社ならではの強みは何でしょうか?
警備業界は保守的な会社が多く、私が入社するまでも弊社は社長のトップダウンの経営スタイルでした。私は社員が考え、新しいものが生まれるように変えていきたいと考えていましたので、時代の変化に柔軟に対応できる会社づくりを目指しています。
例えばどんなことに取り組んでいるのでしょうか?
警備業界は今、深刻な人手不足ですが、私は若者のアルバイト先として、警備が居酒屋、コンビニなどの仕事と肩を並べられるような人気の仕事にしたいと思っています。制服は堅苦しくないデザインに変更しました。また、警備の仕事を身近に感じてもらえるよう、仕事の楽しさをSNSなどで発信しています。
2023年10月には、若い社員が中心の警備会社「株式会社RED(レッド)」を立ち上げていますね。
業務内容は弊社とまったく同じですが、若い世代がベテラン社員とのコミュニケーションやジェネレーションギャップに悩まずに働ける環境を整えています。「やりたいことがない」という若者が、働きながら夢を見つける場所にしたいので、数年働いた後に次のステップに進んでもらっても構いません。
一人ひとりが責任感を持って働くメリハリのある職場。
先ほど警備業界は人手不足が問題だと仰っていました。社会はデジタル化や機械化で解消しようと取り組んでいますが、この業界ではなかなか難しいですよね。
施設警備はAIなどの導入で対策が進んでいますが、交通警備は臨機応変な対応が求められるため、人の存在が欠かせない仕事です。完全に機械化することは危険すぎてできないと思っています。
人手不足の問題に対して、御社ではどんな取り組みを進めていますか?
知り合いの勧めで求人活動もSNSを利用し、若手を呼び込んでいます。求人サイトを利用していた頃は応募が1人だけのこともあったのですが、Instagramで採用活動を始めたところ、約100件の応募があり驚きました。でも、ずっと同じやり方で成果が出続けるとは思っていないので、新しい手段を検討しています。
採用した人には長く働いてもらうことも大切だと思いますが、そのための環境づくりはしていますか?
20代の若い社員の考え方も尊重しながら、社員全員で長く安心して働ける社風を作り、会社を成長させていこうと励んでいます。これは仕事の取り組み方も同じで、「仲間意識を持って従業員みんなで仕事に取り組み、みんなで勝ちにいくこと」を大切にしています。働き手一人ひとりが与えられた役割をまっとうするからこそ、会社が成立しますから、従業員には頑張った分だけきちんと還元したいですね。
従業員それぞれが役割を理解し、しっかり働くことを求めているのですね。
若手社員に対して、ベテラン社員はしっかり技術を教え、考える力を身に付けさせ、まだ若い中堅は現場で活躍する姿を見せるよう指導しています。そのために、法律で定められた現任教育を毎年確実に実施しています。従業員は日々現場で一所懸命になって働いてくれていますから、全員が集まる研修は年1回だけです。このほかはできるだけ負担がかからないよう、私が直接出向いて話をするようにしています。
幼い頃から見てきた父の偉大さを大人になって改めて知る。
2020年に先代社長のお父様から会社を継承されていますね。その前はどんなお仕事をされていたのですか?
札幌大学を卒業した頃は父の会社を継ぐ気持ちはなく、パチンコホールを運営する大手企業に就職して帯広で働いていました。マネージャーまで昇進し、給料にも満足していたのですが、「本当に自分がやりたい仕事なのか」「このまま続けていいのか」と悩むようになりました。そんな時、地元・札幌へ異動になり、父親とコミュニケーションを取る機会が増えました。父は人情に篤く、基本的なマナーを厳守するなど、本当に尊敬できる人です。改めて父の仕事ぶりを見るうちに警備の仕事にも興味が沸き、2013年に常務として入社しました。
常務として入社する上で、どんなことを心掛けて仕事しましたか?
勤務歴20年以上のベテラン社員が大勢いますから、常務として入社した私に反感を持つだろうと感じていました。そこでまずは他の社員が敬遠する現場に積極的に入り、自分の覚悟を見せて受け入れてもらおうと努力しました。
社長に就任する際、戸惑ったことはありますか?
入社当初からいずれ私が社長になると決まっていたので、私の心の準備はできていました。ですが、スムーズに代替わりできたのには先代社長の手厚いサポートがあったからこそだと、父に感謝しています。対外的な集まりには私が次期社長だと周囲に伝えるために同行してくれたので、私が代表代理として1人で参加した時も気負わずにいられました。新しいことに挑戦する時はいつも背中を押してくれて、大変心強かったです。
代表取締役に就任されて4年が経ちました。よりよい会社組織にするため、大切にしていることは何ですか?
コミュニケーションが社員の安心に繋がると信じ、人が育ち、辞めない会社にするには、経営者との対話は絶対に必要だと感じています。私は会社のトップになりましたが、常にいち社員としての目線を持って対応し、現場まで行ったり、時には仕事以外の場所で従業員一人ひとりの立場に接するように心掛けています。私だけの力では会社は回りませんから、彼らの願いはできるだけ叶えてあげたいですね。
インタビューに応えてくれた人
1984年札幌市生まれ。札幌大学経営学部経営学科卒。2008年に株式会社マルハンに就職。函館や小樽、札幌などの店舗に勤務し、マネージャーまで昇格。2013年に父親が創業した平安警備保障株式会社に入社し、2020年に社長に就任。