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株式会社イノヴェッグ 取締役CEO・高崎雄大さん|札幌のシメパフェを歴史に残る食文化に。催事にも積極展開

札幌圏
外食産業・飲食
株式会社イノヴェッグ 取締役CEO・高崎 雄大さん

2010年代半ばから札幌の食文化として定着してきた「シメパフェ」。食事や宴会の後など、夜にパフェを楽しむ習慣は、今や道外や海外から札幌を訪れる旅行客にも広まっています。市内中心部に深夜まで営業するパフェ専門店「幸せのレシピ〜スイート〜」2店舗を構える株式会社イノヴェッグ取締役CEOの高崎雄大さんに、札幌のパフェの新たな可能性について聞きました。

夜のイタリアンにパフェだけ食べに来るお客様。発見が勝機に

パフェの画像
飲んだ締めはパフェが定着。夜遅くまでお客さんでにぎわいます。

夜のパフェ専門店で成功されていますが、会社はシメパフェのために立ち上げたのですか?

2013年の創業時に始めたのはイタリア料理店なんです。高校で同級生だった代表取締役社長兼シェフの沖浩二に「一緒に飲食店をやろう」と声をかけられ、沖が厨房、私が経営を担当してオープンしたのがイタリアンの「Creative Dining 幸せのレシピ」。開店から1年か2年後には2号店を出したいと話していて、それがたまたま夜パフェが注目され始めた頃だったんです。まだ札幌のパフェ専門店が2店舗しかない時代でした。

イタリアンのお店で当時、パフェも提供していましたよね。うまく時代の流れをつかめたわけですね。

最初の店はイタリアンなのに、なぜか夜中にデザートのパフェだけ食べに来るお客様がいらっしゃいまして。当時はパンケーキが大ブームでしたから、なぜ夜のパフェが売れるのか分からなかったんです。そこで市内の飲食店の様子をリサーチしたら、パフェ専門店に大行列ができていて、真冬の猛吹雪の夜でも行列が途切れないんですよ。これからはパフェの時代だと肌感覚で実感し、2号店は夜のパフェ専門店に決めました。

パフェ専門店に特化してからはずっと順調ですか?

2015年に札幌市内7店舗のパフェ店が中心となって「札幌パフェ推進委員会」が発足し、夜のパフェが「シメパフェ」と呼ばれるようになりました。このネーミングが広まって夜パフェの人気がさらに高まり、個性豊かな専門店が続々と誕生しています。2015年に開店した当社の「幸せのレシピ〜スイート〜」も、さまざまなメディアに取り上げていただきました。それがターニングポイントとなって、パフェ2号店を開くこともできました。

北海道グルメのブランド力を生かし、道外の催事で販売強化

パフェの画像
見た目の美しさはもちろん、食べ進めて変化する味や食感も楽しい

スイーツに特化した飲食店の強みは何でしょう。

食事の店は宴会が多い12月や3月は売り上げが伸び、寒さや暑さが厳しい季節はどうしても下がりがちです。イタリアンからパフェ専門店に進出した背景には、そういうレストランの営業がきつい季節をスイーツで補填したいという考えもありました。さらに北海道の食のブランド力と、「札幌のシメパフェ」というパワーワードを生かして、道外の百貨店の北海道物産展にも度々参加させていただいています。

道外の催事はどこへ行かれましたか?

福岡、大阪、京都、熊本、名古屋、岡山など、全国各地でお世話になりました。北海道に住んでいるとピンと来ないかもしれませんが、道外での北海道グルメのブランド力の強さは本当にすごいですよ。北海道物産展はどこでも大人気です。ハワイで当社のオリジナルジェラートを販売した時は、関税がかかって国内なら1個300円ぐらいの商品が7、8ドルの販売価格になってしまいましたが、それでも完売しました。

オンラインショップでの販売などもされているのでしょうか。

店の味をご家庭や他の飲食店、リゾートホテルなどでも楽しんでいただけるように、2023年からジェラートの販売に力を入れています。以前は外部に特注していたジェラートを自社で製造し、札幌市内中心部の大通にオフィスを構えて、スタッフも1人増員しました。「札幌のシメパフェ専門店のジェラート」をアピールし、ウェブ販売も強化して、店舗の売り上げと外販の割合を9対1から8対2に持っていくのが目標です。

全戦全勝じゃなくていい。3勝7敗でも10回挑戦することが大事

幸せのレシピ〜スイート〜の内観画像
「幸せのレシピ〜スイート〜」は白を基調にした明るい空間

これからの目標を聞かせてください。

これまでにさまざまなスイーツが現れては姿を消し、一過性のブームで終わってきました。札幌のシメパフェにはラーメンやスープカレーのように、地域の食文化として安定した地位を築いてほしいと願っています。観光客の皆さんが「大阪はUSJ楽しい。たこ焼きおいしい」と話すのと同じ感覚で、「札幌はススキノ楽しい。シメパフェおいしい」と喜んでくださるのが常識になって、さらにその中で当社の店を選んでいただけたら。

ライバル店が多い分野ですから、やりがいがありますね。

1店舗だけ頑張っても大きなムーブメントにつながりませんから、お互いに競い合って、札幌全体でシメパフェ文化を盛り上げていきたいです。ラーメン横丁みたいに、パフェ横丁を作るのもいいですよね。私は飲食の事業は全戦全勝じゃなくてもいいと考えています。3勝7敗でいいから、10回チャレンジすることが大事。当社は社長の沖が頑固な職人ではなく考え方が柔軟なので、これからも試行錯誤を続けていきます。

3号店をオープンされるご予定は?

1号店は14席、2号店は34席。今の2店舗でお客様を受け入れるのは、すでにMAXです。皆さんパフェのために30分も並んでくださって、本当にありがたいですね。でも今は店舗を増やすのは難しい状況です。午前3時まで営業していて深夜に混む店ですから、働きやすい時間帯ではないですよね。長く勤めてくれる人材を確保するのは大変です。飲食事業部の統括リーダーをはじめ、店舗を支えてくれるスタッフには感謝しかありません。

若いスタッフに伝えたいのは、愛される店で働く楽しさ

幸せのレシピ〜スイート〜Plusの内観画像
夜パフェが楽しめる「幸せのレシピ〜スイート〜Plus」

飲食業界で経営者になろうと決めたきっかけは?

私はもともと飲食業の経験がなく、以前は建設機械レンタルの営業をしていました。一方、当社の沖は高校を卒業してから料理ひとすじで、19歳の時にはもう将来は独立すると決めていました。ホテルの厨房や和食、洋食、郷土料理で腕を磨き、起業する時に私を誘ってくれたんです。私が高校時代にバスケ部で後輩の面倒見がよかったから、「人の輪に入っていけて、自分にないものを持っている人間と組みたかった」と言ってくれました。

経営の勉強はどうやってされたんですか?

今は現場から離れましたが、店に出ていた頃はカウンターが学校で、お客さんが先生だったようなものです。オープンした頃は、今思えば計画も作戦もありませんでした。何もかも手探りで、お店の存在を知ってもらい、リピーターを増やしてファンになってもらうために必死でしたね。幸い先輩や仲間に恵まれ、人と人のつながりを通して身近な人に多くのことを教えてもらい、たくさんの人に助けられてきました。

お店で働いている人や、これから仲間になるかもしれない人に伝えたいことは。

「幸せのレシピ〜スイート〜」は地元で注目されていて、並んでまで食べにきてくれるお客様がたくさんいらっしゃるお店です。こんなにお客さんが来てくださるのは当たり前のことじゃない。すごいことなんだと実感して、働くのが楽しいと思ってもらえたらうれしいですね。沖と私、2人の経営者や従業員の教育を任せているコアなスタッフと一緒に店を作っていく感覚で、お客様を幸せにする仕事に誇りを持ってほしいです。

(取材、撮影・北山大樹、文・三本木香、編集:片野睦)

インタビューに応えてくれた人

高崎雄大さん
株式会社イノヴェッグ 取締役CEO 高崎雄大さん
趣味:
競馬場巡り、バンド活動、城巡り、バスケットボール

1984年生まれ札幌市出身。「札幌シメパフェ」の仕掛け人の一人。大学卒業後に新潟県の建設機械レンタル会社の営業職に従事し、その数年後に高校の同級生の沖浩二(現・株式会社イノヴェック代表取締役兼シェフ)と起業。どんなコミュニティーにも恐れずに入り、人脈を広げられるのが長所。