ノースパーク株式会社 代表取締役・前川琢也さん|コインパーキング導入期から駐車場運営に携わり、協会の理事長就任へ
ノースパーク株式会社(札幌市)の代表取締役の前川琢也さんは、駐車場の施行・管理、月極駐車場検索サイト「札幌月極.com」を運営し、2024年5月に一般社団法人日本パーキングビジネス協会の理事長に就任します。日本にコインパーキングを導入し、現在は札幌を中心に多くの月極駐車場を運営するなど、駐車場業の発展と共に歩んできた半生を振り返っていただきました。
チラシ配りから「三井のリパーク」立ち上げにスカウト
駐車場業との関わりはいつから始まりましたか?
最初は新卒で東京の大手電線メーカーに就職しました。当時はバブル絶頂期で何の苦労もせずに入社できたのですが、先輩も後輩も実力があるすごい人ばかりで、出世するビジョンが見えず3年で退職してしました。その後、別荘の営業のアルバイトをしている時に、「三井のリパーク」の立ち上げに誘われたのがきっかけです。
別荘のアルバイトからどのように誘われたのですか?
別荘の近くで信号待ちの車にチラシ配りしていたところ、たまたまチラシを受け取ったのが「三井のリパーク」の下請け会社の人だったんです。その人が私の営業方法を面白がってくれまして。その頃はまだコインパーク業界がない時代でしたが、私は新しいことに挑戦するのが好きだったのですぐに仕事を承諾しました。
「三井のリパーク」の立ち上げは順調でしたか?
体力的にきつかったです。今のコインパーキングは、コールセンターや提携する警備会社がトラブルに24時間対応してくれますが、当時そんなシステムはありません。電話も緊急出動も、すべて自分で対応しました。全国にコインパーキングがあったので、日本中を飛び回りました。1日20時間は働いていたんじゃないでしょうか。
大変な時期を乗り越えられたのですね。振り返ってみていかがですか?
大変ではありましたが、これまでにない新しいサービスを作っているという高揚感があり、すごく充実していました。自分ですべて対応していたので、コールセンターのマニュアルも構築できました。それに、「三井のリパーク」の全国の支店の立ち上げに携われたことも財産になりました。
自分の力を試すため40歳で独立。業界経験を買われて北海道へ
「三井のリパーク」に5年間携わった後、コインパーク事業を追求して独立したのですね。
「三井のリパーク」が軌道に乗って、会社が駐車場事業以外にも手を広げるようになったので、コインパーキング事業に専念するためにメンバー3人で独立しました。自分はNo.2の営業で役員。10年間で年商10億円を達成しました。
とても順調に見えますが、その後、ご自身で会社を立ち上げたのはなぜですか?
会社が順調だったのは、No.1である社長の能力が高かったおかげだと気付き、会社のNo.2とNo.1ではまったく違うと感じたからです。だからこそ、自分の力だけでやってみたいと思い、40歳の時に自宅のあった千葉県で起業しました。
千葉から北海道に来た経緯を教えてください。
45歳の時に、「三井のリパーク」を運営していたリパーク株式会社(現・三井不動産リアルティ)の元社長から事業を手伝ってほしいとオファーがありました。その人はリパーク株式会社を定年退職した後、人口が多い割にコインパーキングが少なかった札幌でコインパーク事業を始めていたのですが、除雪の対応が求められるなど大変苦労されていました。そこで、「三井のリパーク」の全国の支店の立ち上げに関わった自分に、声をかけてくれたんです。
どんなオファーを受けたのですか?
その会社の役員になり、月1〜2回札幌で社員の指導をしてほしいというものでした。しかし、蓋を開けてみると事業が大きくできる状況ではないことが分かりまして…。声を掛けてくれた方と相談し、自分が北海道に移住し、会社を立ち上げてこの事業を大きくすることに快諾してもらいました。
コインパーキング大手との競争を避け、月極駐車場に注力
北海道での事業で苦労したのはどんなことですか?
金銭面ですね。1000万円の資金が、たった2年で底を突きそうになりました。苦労した背景には、すでにコインパ―キングの大手が札幌に進出していたことがあります。自分のような新しい会社は信用がなく、土地の仕入れがうまくいきませんでした。少しでも会社にお金を使えるよう、生活を切り詰めて、千葉から持ってきたキャンピングカーも売りました。
事業が波に乗ったきっかけは?
大手と同じように運営しても勝機はないと思ったので、コインパーキングだけでなく、月極駐車場にも力を入れることにしました。コインパーキングと比べると利益は低いですが、収入が安定して会社経営もよくなると考えたからです。地道に営業を続けて、結果的に少しずつ利益が出ました。
2020年にオープンした月極駐車場検索サイト「札幌月極.com」も好調だそうですね。
月間20万PVのある北海道でNo.1の検索サイトになりました。他にも似たようなサイトはありますが、当社のサイトには駐車場を管理する会社も地主も関係なく、すべての駐車場情報が乗っているからでしょうね。掲載数やPV数が増えるにつれて、札幌市内の情報が自然に集まるようになりました。
駐車場オーナーからは掲載料を取っていないそうですが、どのようにサイトを運営しているんですか?
オーナーから掲載依頼がくる仕組みにしたくて、月極駐車場を借りる人から契約代行手数料をいただいて運営しています。掲載料無料で駐車場を紹介でき、契約まで完了できるオーナーにはメリットしかないサイトです。
珍しい運営方法ですが、利益は取れているのでしょうか。
サイトの運営は契約代行の手間がかかる割に、収入は低い事業です。しかし、地道にサイトを運営して、札幌中の駐車場情報が集まるサイトに成長しました。今の当社の事業展開のベースとなっています。
駐車場業を子供が憧れるかっこいい職業に
今後の事業展開について、考えていることはありますか?
札幌市内すべての駐車場情報が手元にあるという強みを生かす事業を考えています。例えば、大型施設やマンションなど、他社には情報がない空いている駐車場を有効活用したいですね。「雪の季節は安全な場所に高級車を停めておきたい」という富裕層からのニーズに応えるために、屋根とシャッターが付いたガレージ駐車場の整備も考えています。
2024年5月には、全国130社が加盟する一般社団法人日本パーキングビジネス協会の理事長に就任するそうですね。理事長としてどんなことを実現したいですか?
駐車場業界の地位を向上させて、駐車場で働く全国の人たちに、誇りを持ってもらいたいです。たとえば商業施設では、駐車場がお客さんと最初に接する場。そして、見送る場所です。単なる「駐車場のおじさん」ではなく、施設の印象を良くする「駐車場コンシェルジュ」として、子供が憧れるようなかっこいい職業にしたいですね。
インタビューに応えてくれた人
1967年生まれ広島県出身。三井不動産販売株式会社(現三井不動産リアルティ株式会社)の下請け会社で「三井のリパーク」の立ち上げに携わり、その後、駐車場業で起業。2021年に「北海道パーキング株式会社(現 ノースパーク株式会社)」の社長に就任し、北海道へ移住。月極駐車場検索サイト「札幌月極.com」も運営。2024年5月には一般社団法人日本パーキングビジネス協会の理事長に就任予定。