株式会社ブレークアウト 代表取締役社長・藤田龍之介さん | 海外富裕層をターゲットにした民泊事業が波に乗り、売上10億円企業へ
不動産情報サイト「SUUMO」の広告営業時代、入社1年4カ月で全国営業職部門別半期表彰・特別賞を獲得した実績を持つ藤田龍之介さんは、不動産の知識とポータルサイトでの集客のノウハウを生かし、民泊事業の株式会社ブレークアウト(札幌市)を2017年に設立。投資家に向けた民泊事業用物件の購入をサポートし、管理・運用代行もしています。海外の富裕層をターゲットにした民泊事業は、インバウンドの回復と円安が後押しし、2024年5月現在でコロナ禍以前の売上をはるかに上回っています。
投資として海外富裕層向け民泊事業を提案
まずは貴社の事業について教えてください。
個人の不動産投資家や新事業を考えている法人をターゲットに、海外の富裕層向け民泊事業の立ち上げをサポートしています。物件の選定からリフォーム、運営までをワンストップで請け負っています。他社が所有する物件の「民泊管理業」が売上の7~8割を占め、このほか自社物件の「民泊業」も展開しています。
海外の富裕層向けの物件ですと、マンションの一室を貸し出すのとは異なりますか?
空いている戸建て住宅を民泊に転用しています。自分で料理が作れたり、他の宿泊客を気にしなくていい自由さに加え、ホテルにはない広さがあり富裕層に人気です。賃貸にするよりも収益が見込め、すぐ売却できますし、地方の空き家問題の解決にもつながります。
社会貢献まで含めた投資家のメリットを追求しているのですね。
当社の強みは、投資家の収益を考え、最大限上げる物件の提案力ですからね。当社は実績が豊富なので、データを見せながら具体的な提案ができますし、リフォーム物件のデザインにも自信があります。
センスの良いリフォーム会社を起用しているのですか?
常時3~4社のデザイン会社と取引していますが、あえて決まった会社に固定していません。よりよい提案をしてくれる会社にアップデートしています。
インバウンドの回復と円安が民泊事業好調の追い風に
民泊事業について詳しくお聞きします。なぜこの事業を会社のメインに選んだのですか?
もともとはマッチングアプリなどのプラットフォーム事業をやりたいと思っていて、その種銭を増やすためでした。実はリクルートで働いていた時から民泊事業に可能性を感じていて、試しに民泊のポータルサイトに自宅を掲載してみたんです。そしたら、予約リクエストが殺到して、これを事業にしようと思いました。
リクルート時代から興味のあった民泊事業を実際、どんなふうに確立させましたか?
事業を始めた頃は、住宅宿泊事業法(民泊新法)の成立前で、民泊の認知度が低く、大家さんの理解が得られないこともありました。それでも何とか物件を増やし、安価な物件に中古家具を入れるなど最低限のコストでスタートしました。その後、リフォームすると利益が上がる物件があると分かり、事業を拡大していきました。
民泊のターゲットは海外の富裕層とのことでしたね。コロナ禍を経て観光客が増えてきた今、事業は好調ですか?
売上がコロナ禍前に戻ったのではなく、それ以上に好調です。円安も後を押し、1泊5万円だった部屋を7万円にしても予約が埋まります。7期目に入った2024年4月現在で、物件オーナーとの契約成約件数が65件。7億円の売上があるので、夏のオンシーズンでさらに伸ばして10億円を達成したいですね。
民泊事業が順調ですが、当初予定していたマッチングアプリを進める予定はあるのでしょうか?
コロナ禍で世の中のプラットフォーム事業が成熟してきたので、以前ほど魅力を感じませんが、新しいものを作るのが好きなので可能性はありますね。それ以上に今は、この会社をどこまで大きくなるかワクワクしています。
1年4カ月で全社1位を達成した異例の営業成績が、起業を後押し
藤田さんが起業するまでの経緯を伺います。小樽商科大学企業法学科を卒業後、食品卸の大手である国分株式会社(現・国分グループ本社株式会社)に就職されたのですね。
東京本社の在庫管理に配属された後、ルート営業に従事しました。どちらもルーティンワークで自分には刺激が足りなく、サラリーマンじゃなく起業したいなぁと考えていました。
退職後すぐに起業せず、株式会社リクルート住まいカンパニー(現・株式会社リクルート)に転職された理由は?
当時はまだ起業する勇気がなく、経験を積むためにリクルートに就職し、不動産のポータルサイト「SUUMO」の広告営業として千葉県を担当しました。40社ほどを受け持つルート営業でしたが新規開拓も許されていたので、営業としての能力を伸ばすことができました。
そのリクルート時代に輝かしい営業成績を残しているそうですね。
自治体向けの広告商品を作って販売したことが評価されて、入社1年4カ月で全国営業職部門別半期表彰・特別賞を獲得しました。当時としては史上最速だったそうです。この受賞で自信がつき、退職から11カ月後に札幌で法人企業になりました。初めてお客さんが来てくれた時は、「やっと事業を形にできた!」と実感できて本当にうれしかったです。
会社の成長を数字で実感できることが何よりの喜び
ここからは、経営者としての経験や考え方について伺います。実際経営者になって、どんな苦労がありましたか?
コロナ禍で売上が伸ばせなかったことです。自分ならできると信じて疑っていなかったので、どんなに手を尽くしても現状維持が精一杯だったのには落ち込みました。社員にも多くを求め過ぎてしまいましたし…。時流には身を任せ、人には素直な心で接するべきだと学びました。
この苦い経験を組織作りに生かしたのですね。
自分にしかできない業務をなくすように心掛けています。これからも社員に任せられる領域を増やして、自分がいなくても会社が回る状態を作りたいですね。今はまだ社員の勤続年数が一番長くて2年程度ですが、従業員はみんな目先の問題解決だけでなく、中長期で考えられる人材ばかりです。今後さらに成長し、会社を支えてくれると期待しています。
経営者としてやりがいを感じている時はどんな時ですか?
自社物件の売上や予約状況、会社全体のキャッシュフローなど、数字が伸びていくことにやりがいを感じています。数字を見るのが純粋に好きではありますが、経営者として数字に責任を持たなくてはいけませんからね。
インタビューに応えてくれた人
- 趣味:
- ドライブ、旅行、宴
1991年生まれ札幌市出身。小樽商科大学企業法学科を卒業後、国分株式会社(現・国分グループ本社株式会社)に就職し、東京本社に勤務。翌年株式会社リクルート住まいカンパニー(現・株式会社リクルート)に転職し、入社から1年4カ月で全国営業職部門別半期表彰・特別賞受賞。その後退職し、2017年に札幌市で株式会社ブレークアウトを起業。